出会った橋ール・ピュイの道-20
パッサージュ巡りも後半に入ると、パレ・ロワイヤルに出会う。ルイ14世がルーブル宮殿から移り住んだことで王宮(パレ・ロワイヤル)と呼ばれた。フランス革命後、用途は転々と変わり現在は文化省や国務院が入っている。建物で囲まれた庭園は王宮当時から一般公開され、庶民が散歩を楽しんだそうだ。その歴史を継いでか今でも多くのパリ市民が集っている。彼らの散歩の目的は木陰で憩うというより、屋外で太陽光を存分に浴びるためのようである。
中庭にあるダニエル・ビュラン作の白黒ストライプ円柱群のモダンアートは、私には意味するところは分からないが、周りの中世の建物とすっかり馴染んでおり、子供達の格好の遊び場になっている。
文化省の入る建物にも法隆寺の百済観音の透彫を思わせる衣装が着せ掛けられている。クラシックとモダンが全く違和感を感じさせない佇まいである。
ルーブル美術館にぶつかり左折する。今回はオルセー美術館と共にルーブルもパスである。右手にサン・ジャックの塔が見えてきた。16世紀に教会が建設されたが、この鐘楼だ怪我その後の破壊を免れた。
この塔は観光客にとってはパリが一望できる展望台であるが私には特別の意味を持っていた。この塔はフランスの主要なサンチャゴ巡礼路の一つ”パリの道”のスタート地点である。次は、ここからとの野望を抱いていたが、今では果たせぬ夢となってしまった。
パリ市庁舎が見えてきた。14世紀以来パリの行政機関として機能し続けている。そして、ルネサンス様式の華やかさを保ち続けている。
機能的には色々な問題を抱えているであろうが、それを遥かに凌駕するものがあるのであろう。
紳士衣料品の店には果たして誰が着るのだろうかと思わせるシャツが並んでいる。
こうしたものを見続けていると、自分でも着用できるのではないかと思い始める。帰国後、それまで派手だと敬遠していたシャツを手にするようになった。気分が高揚する。
道路上でダンスをするカップル、そしてカフェの中ではギターの演奏に合わせて踊る少女。パリを満喫しながら歩き続ける。
宿の近くには15世紀の民家が現役で残っている。これもパリの姿である。
地図を片手に足の赴くままにパリの午後を愉しんだ。
まずは人間が旅するときに大事なのは見ること、目からの情報ですね。それから、におい。そして温度ですね。これを知っていることが行った人の体験ですよ。