記憶のかけらー密

何はともあれ”密”は避けましょうの時代である。しかし、私の歩き旅はどちらかと言えば”疎”の空間を彷徨う旅であった。でも、時には思いもかけない”密”に出会い、その変化を楽しんだ。

 

サンチャゴ巡礼路はほとんど人に出会わない片田舎や山野を縫って続く。しかし、時には連続的に”密”に出会う。「銀の道」の南部はあのイベリコ豚の産地である。巡礼者は柵に囲まれた放牧地の出入り口の扉を開け閉めしながらその中を通過する。群れている家畜の中を「ごめんなすって」と遠慮しながら進む。

イベリコ豚はその商品価値ゆえか柵の中で保護状態にあった。

2015年5月25日 お邪魔します スペイン/Almaden de la Plata 「銀の道」

 

念願のポルトガル訪問は思いもかけずサンチャゴ巡礼という形で実現した。離葡の前日の夕刻にLisboaリスボンの下町アルファマに別れを告げに出かけた。なんとなく街中がざわついている。メインストリートではパレード。アルファマでは異様な人混み。何事かと確認すると明日6月13日はリスボン守護聖人聖アントニオを讃える祭りだと言う。旅の下調べでは全くひっかかっていなかった。「イワシ祭り」とも言われあちこちの屋台から煙と香りが立ち込めている。イワシハンバーガー?とワインを両手に、踊りまくる人混みに呑まれて過ごした。宿に着いた時はすでに帰国当日であった。昨日の出来事は私の壮行会であったとタクシーで空港へと向かった。

f:id:peregrino:20220404171639j:plain

2013年6月12日 壮行会  obrigada ポルトガル/Lisboa  after「ポルトガルの道」

 

「ル・ピュイの道」は中途のFigeacフィジャックからCahorsカオールまで三つのルートに別れる。私は水恋しさから川沿いのルートを選んだ。途中の集落のカフェでコーヒーを飲んでいるとそこのマダムが声をかけてきた。外に出て見ろと言っているようだ。なんと、表で目撃したものは羊の大群であった。この季節には餌となる牧草を求めてこういった羊の大群が通りかかるのだそうだ。2〜3人の牧童が羊たちを黙々と誘導してゆく。酪農国家フランスの底力をひしと感じた。

f:id:peregrino:20220404171818j:plain

2018年5月21日 垣間見た酪農国家 フランス/Figeac近傍 「ル・ピュイの道」

 

上野近辺の街歩きの途上、湯島天神に立ち寄った。そこで出会ったのは牛の大群であった。でも、それは絵馬に描かれた牛であった。季節によっては受験者たちで賑わっているのだろうが、10月ということもあり人影の方はまばらであった。

f:id:peregrino:20220404172323j:plain

2017年10月14日 それにしても合格率は 日本/東京 湯島 街歩き