記憶のかけらー移動手段だけではないメトロ

歩き中心の旅や街歩きを楽しんできた。でも、バス、鉄道、バスといった乗り物も利用した。単なる移動手段に留まらず、旅の一部分として様々な楽しみを享受した。

 

鉄鋼・造船の町として栄えたBilbaoビルバオは”アートによる都市再生”を図り、多くの観光客で賑わっている。中でものフランク・ゲーリー設計のグッゲンハイム美術館は館内の美術鑑賞とともに美術館そのものも鑑賞に値する。1995年に開通した地下鉄の出入り口はノーマン・フォスター設計で統一されており、街中での爽やかな点景として楽しませてくれた。

2014年5月298日 さすがフォスターさん  スペイン/Bilbao 「北の道」

 

LIsbaoリスボンの移動は主として路面電車と地下鉄である。それぞれ単なる移動手段に留まらない。路面電車はスピードは速くないが、せせこましい街中を走り回るジェットコースターを思わせる。一方、地下鉄各駅のホームの壁面のアズレージョ装飾はギャラリーを思わせる。リスボンカードを手にしてメトロギャラリー巡りを楽しむ。私のお気に入りはカイス・ド・ソドレ駅の「不思議な国のアリス」である。

2013年5月2日 メトロギャラリー巡り ポルトガル/Lisboa  before 「ポルトガルの道」

 

パリの地下鉄は1900年に作られた。施設のデザインはアール・ヌーヴォー建築家のエクトール・ギマールが担当した。しかし、モダンデザインの普及とともに時代遅れとして忘れられていった。今残されているギマール設計の駅は2駅である。その一つ16区ブローニュの森脇のポルト・ドフィーヌ駅に出かけた。人影もまばらな緑地にぽつんと佇んでいた。やっと出会えたとの感動とともに、少なからず侘しさも感じた。

2018年6月14日 ぽつんと佇む フランス/ Paris after 「ル・ピュイの道」

 

都営地下鉄大江戸線は1991年に開通した。建設にあたって各駅構内の壁面等のデザインはそれぞれのデザイナーに任せられた。私の住まいの最寄駅は大江戸線ので利用頻度が高いが、どうも記憶のかけらに見当たらない。でも、やっと出会いました。大江戸線飯田橋駅の出入り口です。特段印象深かった訳ではなく奇抜なデザインにシャッターを切ったようです。

2011年6月3日 なんだ、これ 日本/文京区 街歩き

 

滞在の理由は様々ですが、こうした記憶の断片の向こう側に広がる世界は、いつでも私の心の力強い支えとなっています。出会った人、見てきた景色、体験してきたこと、そうした数々の思い出はいつまでも色褪せことのない、人生にとって最高の贈り物だと言えるでしょう。

  ヤマザキマリの世界逍遥録」 ヤマザキマリ KADOKAWA