記憶のかけらー足下から/アート

ミュージアムやシアターに出かけなくても、アートに触れることができます。街中を歩いていてちょっと足下を見た時、そこからアートが声をかけてきた。

 

マドリードの地下鉄駅アントン・マルティンから裏道のCalle de las Huertas(果樹園通り)を歩き、巡礼宿 に向かう。通りの突き当たりはプラド美術館や王立植物園である。かつては果樹園であったのであろう。床に金属文字で何か文章が書かれている。後日調べてみると国民栄誉の称号を受けた19Cの劇作家、詩人Jose Zorrillaの作品「ドン・ファン・テノーリオ」の一節であった。一時期この辺りで創作活動をしていたのか。スペイン文学に関心のある方であったらしばらくその場に立ち尽くしたのではなかろうか。 

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2014年6月29日 裏道の文学作品  スペイン/マドリード after「北の道」

 

ポルトガルのAveiroはイタリアの海港都市ヴェネツイアと同様、海を克服してき「潟」の街である。「ポルトガルヴェニス」とも呼ばれている。その町外れのAveiro駅舎全面がアズレージョ。そして、そこに向かう約1キロの一直線の道の歩道には二色の石で描かれた抽象画が延々と続く。駅に向かう人はその距離を忘れて歩いているようだ。しかし、運河で見られた観光客の姿はほとんど見られない。 

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2013年5月31日 延々と続くアート ポルトガル/アヴェイロ after「ポルトガルの道」

 

アラブ世界との交流を目指したアラブ世界研究所は、セーヌ河畔に聳え立つ文化施設である。しかし、観光客はもっぱらジャン・ヌーヴェル設計の外壁を覆うユニークなパネルの鑑賞と、穴場的パノラマスポットの屋上テラスからのパリの街並みの展望に時間をを費やしている。私も、その一員であったが、私の関心は屋上に敷き詰められた鉄板に集中していた。図柄からアラブ世界の何かを表現していると思うがそれが何なのか。未だ解明できていない。 

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2018年5月6日 アラブに近づきたい フランス/パリ after「ル・ピュイの道」

 

丸の内仲通りを彷徨いていた時、歩道上のガラス帯が目に入った。そこには周りの高層ビルが映り込んで、一服の絵画を思わせる。とりあえず写真に収めて帰宅したが、どうも記録の写真としか思えない。いつか再訪して自分なりの感覚で撮影してみたいと思い続けている。

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2019年10月4日 丸の内ストリートギャラリーもいいけど 東京都/丸の内 街歩き

 

栗田亘(コラムニスト)

日本人はどこに行ってもすぐにカメラを取り出して写真を撮る。そうじゃなくて、自分の目でよく見ろ、なんて人がいますよね。

野呂希一(写真家)

(中略)記憶に残そうとカメラを持たずに見るより、ものをもっとつぶさに見てからじゃないと、本当の写真は撮れないですよ。

   「季寄せ72種」 栗田亘/アサヒビール株式会社