不要不急の神話の世界

テレビの街歩き番組で紹介された神楽坂の”象の滑り台のある児童公園”を訪れ、この場で取り上げたことがあった。今回、テレビで見かけた”神話の世界へと誘う広場”を何はさておきと出かけることとした。

9月15日、都営新宿線市ヶ谷駅で地下鉄を途中下車した。街歩きの一環として地方公共団体や大学等が実施するシンポジウムや展示会に足繁く通っていたが、コロナの影響で中止が相次いでいる中、有り難くも法政大学から展示会とシンポジウムの案内が届いた。

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キャンパス内にはほとんど学生は見当たらない。昨年まで頻繁に訪れ勝手知ったる校舎内の四箇所の展示場を渡り歩いた後学食で昼食を摂った。従業員のおばさんも手持ち無沙汰の様子で話し相手になってくれる。

展示の中で目を引いたのは本郷の東大一帯の旅館をプロットした地図。

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解説には「明治40年の全盛期には500軒を超えたといわれる下宿屋は、交通網の発達や全国からの修学旅行の活性に伴い旅館街へと変化を遂げました。昭和50年には120軒ほどもあった旅館も今では5軒にも満たなくなっています。」とある。朧げな記憶で高校の修学旅行の宿はこの中の一軒だったであろうとはるか昔を懐かしんだ。

後日、二日間ZOOMで関連のシンポジウムを視聴した。

都営地下鉄三田線に乗り継ぎ白河駅で下車し、約2キロ先の目指す広場に徒歩で向かう。その広場は徳川光圀の弟を藩祖とする陸奥森山藩松平家の旧上、中屋敷跡一角を占める窪町東公園内にあった。江戸三名園の一つに数えられた”占春園”も残されていたが、その面影を感じ取れる状態ではない。

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広場に到着すると怪しげな彫刻が数体並んでいる。文京区がドイツのカイザースラウテルン市と姉妹都市縁組を結んだ記念に公園の一角を「カイザースラウテルン広場」として整備し、そこに同市の彫刻家ゲルノト・ルンブフ氏夫妻が製作した作品を設置している。

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我々にとっては一見して異様な動物たちに見えるが、ドイツでは馴染みのあるものたちであろう。像にはそれぞれメッセージが込められている。

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馬に見えるのは伝説上の動物のユニコーンで「偉大な力」を象徴している。

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魚は市の紋章にもある「幸運のシンボル」。日本人に親しみのある鯉のイメージを重ねている。単なる鑑賞のための作品ではなく子供たちにとっては遊具にもなっている。フリードリッヒ一世も遊び仲間である。

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「地球が発展してきた歴史の起源」や「太古と日本文化の源」を象徴するアンモナイト。歯車は「日本のテクノロジーとその急速な発展」だそうだ。

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渦巻きはカタツムリで「進化」を示し、「静寂と瞑想」という内面性も表現している。現物を目の前にしていると徐々ににではあるがなんとなく伝わってくるものがある。はるばるやって来た甲斐があった。いいものに出会えた。

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途中、小石川植物園の長い脇道を通る。往路は短調さを感じて歩いたが、帰路は太陽光の加減で塀の上のパンチングメタルから透けて見える内部の緑を楽しみながら歩いた。