出会った橋ール・ピュイの道-12

 5月30日、広大な麦畑が続く。比較的平坦な微高地のためアクセントになる橋には縁がない。麦の穂浪に紛れこんで群生するケシに疲労感が束の間であるが消え去る。

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宿泊地La Romieuも城塞都市である。外周を建物でぎっしり取り巻枯れた中に入るとなんとなく安心感を覚える。

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この村は”ネコの村”として売り出している。今は閑散としているがバカンス最盛期には観光客で賑わうのであろう。なぜ”ネコ”かについては当然ながらレジェンドに基づいている。伝説の主人公立ち会いのもと案内所の方に話を聞いた。(詳しく2018−08−10”猫はmiauミユーと鳴く”)上着のアートを鑑賞しながら話を聞く。

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何匹いるかは聞かなかったが、村内をぶらつきながら建物の壁面に潜んでいる住猫との出会いを楽しむ。

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出会いは寂しげな住犬一匹を含み十六匹であった。

当然のことながら村の中心には教会がある。塔に登ると途中で聖堂の屋根裏に出た。健剛な石造からは思いもよらない木構造である。この時の記憶により後日のパリノートルダム大聖堂の火災の様が理解できた。石造の建物があの様な燃え方をする。

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連日の通り雨。土質が変わったのか泥濘の連続で歩くにつれ視線が高くなってゆく。ロンドンブーツを履いた気分になる。

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途中のCondomコンドンはアレクサンドル・デュマの”三銃士”の隊長ダルタニアンの生地だそうだ。

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そして、鼻母音で”コ”と”ド”を鼻にぬいて発音するので日本ではこの町の名はコンドム、コンドームとも表記される。避妊具のコンドームは、医師コンドームの発明とするのが一般的であるが、この町に起源をもつとする説もあるそうだ。詳細は未確認であるが、ロマンとロマンスが同居する町である。

 続く

 

11日の東京新聞朝刊で『橋の風景 変えた人 不世出の橋梁デザイナー故大野美代子さん』に出会った。横浜ベイブリッジを初め全国で約七十の橋をデザインし、2016年に亡くなられたそうだ。橋梁界の技術者ならば一度は受賞したいと言われる”田中賞”を19回受賞されている。

橋は公共事業であることが多く、デザイナーの名は出にくい。「橋梁界では知られた大野さんも一般には知られず、『橋梁デザイナー』の名称も馴染みが薄い。しかし間違いなく日本の橋の風景を変えた一人」。「ヨーロッパの橋は『空間の芸術』と位置付けられているが、最近の国内の橋は経済性優先。大野さんが見出した付加価値に乏しい」と都道路整備保全公社紅林さんのコメント。
母校の多摩美大で来月「ミリからキロまで」と題して「大野美代子展」が開催される。果たして出かけることができるか。