地球そして歴史との出会い

最近は専らテレビ視聴と読書で日々を過ごしています。NHKBSプレミアムで興味深い番組に出会いました。フランスのテレビ局がアルプスの造山運動をドキュメントしたものです。現在目にする事ができるその証が次々と映し出されます。そして、南フランスのLe Puy en Velayが映し出されました。そうです。私は2018年の5月にここからサンチャゴ巡礼の"ル・ピュイの道"へ足を踏み入れました。オーヴェルニュ地方オート・ロワール県の県庁所在地ですが、それ以上にこの地は地球にとって重要な意味を持つ土地だと知らされました。

この辺りは噴火が一度で収まった単成火山と言う小さな火山の集積地だそうです。地中海プレートが大陸に押し上げてきてイタリア半島が生まれた時、大陸側との間に挟まれた土地が左右に押し出され、その部分の厚さが薄くなり、弱い部分からその下に溜まっていたマグマが噴き出したのです。マグマの量は少なく分散して噴き出した為に一度の噴火で収まり、噴火を繰り返した普通の火山で見られるような大きな火山にならなかったそうです。100%正確ではありませんが概ねこんな解説でした。

突然であった国鉄のストを悪戦苦闘の末、代替バスでリヨンからル・ピュイに到達した時には既に日が暮れていました。翌朝、ノートルダム大聖堂の巡礼の無事を願うミサに列席しました。40〜50人集まっていました。

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列席者の紹介がありジャポネと言う言葉が聞こえ、視線が一斉に集中しました。勝手ですが

オンリーワンの誇らしさを感じました。その後、突然聖堂中央の床が開き、巡礼者はその中の階段を下って巡礼へと旅立ちました。

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 先ずはサン・ミッシェル・デギレ礼拝堂へと向かいました。そうです。この礼拝堂こそ単成火山の頂上に建っていたのです。目の前にその姿が現れました。

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当時はこの岩山生成の背景を知らなかった為その姿に奇異さを感じました。今になってあの出会いの刻をもっと大事にすべきだったと思われます。268段の急な階段を登り詰めると、目の前には12Cに建てられたロマネスクの礼拝堂が迎えてくれました。

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何故こんな所にと思う。願いが叶う為にはできるだけ天に近いところと思ったのでしょうか。薄暗い堂内に入ると壁画そして天井画に包み込まれる。そして小さなステンドグラスから微かな光が差し込んでくる。

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高台の為展望は抜群で、もう一つの単成火山頂上にはキリストを抱くマリア様が目に入る。

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そして、巡礼の目的地Saint-Jean-Pied-de-Portへ向け一歩を踏み出した。

 

因みに日本でも単成火山に出会えるそうです。伊豆半島ができた時に噴火してできた伊豆東部火山群です。その代表が国の天然記念物の大室山スコリア丘だそうです。

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そう言えば、"塩の道"を歩いた時にフォッサマグナパークで日本列島生成の痕跡に出会ったことを思い出しました。

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私は残念ながら地学に特段の関心を抱いていません。単なる旅のロマンとして語っている為、表現に曖昧さを伴うことを避ける事ができません。悪しからず!

 

最近、建築史家・建築家・東京大学名誉教授の著書を読みました。その中に"のこす言葉"が記されていました。気になったのでここにも残しておきます。

 

 部屋は一人の  住宅は家族の  建築は社会の  記憶の器。自力でも誰かに頼んでも  お金はかけてもかけなくとも  脳を絞り手足を動かして作れば大丈夫。器が消えると個人も家族も社会も記憶もこぼれて消えるでしょう。記憶喪失ご用心。

                               「藤森照信ー建築が人にはたらきかけること」 藤森照信/平凡社