サイクルツーリング

 JR 東日本が来年から東京-房総半島で自転車を折り畳まないでそのまま持ち込める専用列車の運行を開始するそうだ。スペインやポルトガルで電車で移動していると、時々自転車を押してそのまま乗り込んでくる客と同居することがある。日本のように混み合うことがないので、お互い当たり前のように振る舞っている。彼らは電車の移動とサイクリングを繰り返しながらヨーロッパ中を旅して回っている。

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フィゲラスへ 向かう車中 2015/06/29

サンチャゴ巡礼路でも多くの自転車巡礼者と出会った。巡礼成就後(歩行者100 km,自転車200km以上)の統計では平均で約13%が自転車とのこと。車道脇の歩行者路を一人で歩いていると、数人 のグループが次々と"buen camino" と声をかけながら。猛スピードで走り去って行く。狭い登山道でも背後から注意を喚起しながら横をすり抜けてゆく。手段は異なるが仲間意識を感じ元気づけられる。

ついでながらセグウェイでのんびりと巡礼している人にも出会った。

 自転車インフラが整備されているため、🚲と🚶、そして🚙が心地よく共存している。

日本でもオリンピック開催を出汁にして自転車インフラの整備を叫んでいる。チョット違うと感じているが、まあ良しとするか!

 

 

エキナカアート アゲイン

先週は駅舎の中の美術館について書いた。今週は昼食を摂りながら,毎日.BSプレミアムの"関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅"を視ながらポルトガルの旅をしている。以前、リスボンの地下鉄駅のアズレージョアートを紹介(2015/10/09・16・23)したのを思い出し、ipadの"ポルトガルの道"の引き出しを開けてみた。そこで今回はポルトガル第二の都市ポルトエキナカアートについて書いてみる。

先ずはポルトの玄関口サン・ベント駅舎ホール。高い天井高の四面の壁一杯に展開するアズレージョは圧巻である。そこに描かれているのはポルトに纏わる歴史画であるが、残念なことに理解不十分の私には「すごい」「きれい」に留まる。勿体無い!

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サン・ベント駅構内  2013/05/16
側には地下鉄の駅があり、その地下通路には日本画を思わせるアズレージョ。そしてホームの壁面には駅名だけ。シンプルであるがアートになっている。
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メトロ  サン・ベント駅  2013/05/17
ポルトの台所はポリャオン市場。最寄駅の通路のアズレージョは地上の活動を彷彿とさせ、通行人が前を通ればそのまま絵の中に入って行きそうである。
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メトロ  ボリャオン駅  2013/05/17
日本でも東京の都営地下鉄大江戸線の各駅に見られるように、その土地に因むアートらしきものがあるがどこか違う。所構わぬポスターや過剰な注意書きが見当たらないし、出入りする電車の音以外の音が殆ど聞こえない。あたかもミュージアムにでも居るような気分にさせてくれる。
序でにカルモ教会の外壁のアズレージョ。これぞマチナカアート。
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カルモ教会 2013/05/16
 

四次元との出会い

 以前、年月を経たJR高架下を活用した商業施設を訪れたが、今回は大正三年建設のJR駅舎内の美術館に出かけた。美術館は1988年に開館し、駅舎の復元工事に伴い2012年にリニューアルオープンした「東京ステーションギャラリー」である。何時かはと思いながら、「シャガール  三次元の世界」という興味深い企画に惹かれてやっと想いを果たした。

展示室は、鉄骨煉瓦造の構造体である鉄骨や煉瓦を剥き出しにし敢えて仕上げを施していない。創建時の仕上げを落とした煉瓦壁面には、漆喰がのりやすいように穿たれた痕跡が点在し、巧まざる演出効果を発揮している。展示された作品には程よい背景となると共に、時の流れを視覚化して来場者の鑑賞時のイメージを膨らませる四次元の空間を提供している。しかし、展示室を繋ぐ階段室に一歩出ると、現代風の仕上げが施された空間が現実に引き戻す。

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展示室では撮影禁止につき

展示作品は、今まで殆ど紹介されてこなかった彫刻作品が、同じテーマやモチーフの絵画と併せて展示されている。様々な素材の彫刻作品は、キュビズムの流れからか三次元の作品でありながら二次元の作品にも見える不思議な世界観を醸し出している。

一方、シャガールの絵画はステンドグラスを思わせるシャガールブルーに代表される色彩の魅力が語られるが、展示室内の解説には二次元・三次元を越え四次元を表現しているとあった。確かに妻ベラとの思い出?を描いたものにはそれが感じられる。

フランスはランスの大聖堂にはシャガールのステンドグラスがあるとの事。全身でシャガールの世界に包まれてみたい誘惑に駆られた。

 

私にとっての旅

朝日新聞によれば歴史の教科書から坂本龍馬が消えるかもしれない。そして先週登場した吉田松陰も……。その正否の判断は私にはしかねる。しかし、大学入試に絡めて語られているのが気になる。

ところで、私にとって旅は観光の要素もあるが、歴史の現場に身を置いて色々と想いを巡らせる事にある。従って旅に出かける前には訪れる場所に関わる歴史の下拵えをしておく。その場合、歴史の教科書にあるような通り一遍の事実に留まらず、幅広い視点で見た歴史に目を通す。 

スペインではローマ帝国イスラムとの関わりのみならず、現代に直接繋がる共和制移行後の歴史も興味深い。ポルトガルと地球を二分した大航海時代と現在を横に並べてその経緯を実感できた。、

熊野古道では信仰の歴史は当然であるが、庶民の生活にも想いを及ばせる。そして、塩の道では流通の仕組みの今昔を垣間見る。

最近「チバニアン」なる言葉がニュースで耳に入った。これはなんと人類の歴史以前の地球の歴史に関わる話である。私にとっての"歴史"を超えた話であるが、ちょっと現場を訪れたくなる誘惑にかられる。そういえば塩の道ではフォッサマグナ(糸魚川ー静岡構造線)を歩き、露出させた断層を目の前にし、4億年前の歴史現場に身を置き日本列島の成り立ちの一環を知る旅となった。

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日本列島の歴史の現場   2017/05/19

 

私にとって"旅"は三次元の"TRAVEL"に留まらず四次元の"TIME TRAVEL"である。次はどんな歴史に身を置くことができるか楽しみである。

 

 

マイナーな歴史も楽し

箱根駅伝出場の決まった喜びに沸く国士舘大学が、創立100周年記念として1821年に伊能忠敬が作成した大地図「伊能図」が展示されると聞き世田谷に出かけた。正・副図は既に焼失し今回は米国所蔵の複製を基本としたレプリカであるが、旧体育館の床一杯に並べられた1/36,000の200枚余の地図上を歩き回れた。その精緻さのみならず美しさに終了時間まで何度も日本列島をトレイルした。

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ウィキペディアの写真借用

帰路"せたがや文化マップ"を手に周辺を歩く。先ずは吉田松陰を祀った松陰神社。斬首後小塚原に放置されていた遺体を伊藤博文等が長州藩の屋敷のあったこの地に改葬したとの事。次は建て替えにあたって前川國男設計の現庁舎の取り扱いで揉めた世田谷区役所。結果は第二庁舎を残すとなったが、薄汚れたコンクリート打ち放しの建物に対する区民の思いは微妙であろう。お白州跡のある重文の世田谷代官屋敷、世田谷吉良の菩提寺勝光院、源義家創建と言われる世田谷八幡宮を経て、彦根藩主伊井家菩提寺豪徳寺へ向かう。奥の一画に井伊直弼を中心に歴代藩主の墓がズラリ。質素であるがネームバリューからか威圧感を感ずる。二代藩主が門前の猫の招きで寺に雷雨を避け、和尚の法談を聞け大いに喜び、後に伊井家の菩提寺にしたとの伝説があり、招き猫の発祥地とされている。大河ドラマ「直虎」のお蔭もあり、外国人観光客を含め結構参拝客が見られた。かつて歴史教科書で見かけた名前に次々と出会わせた歴史探訪を楽しんだ。

先日地下鉄で初めて席を譲られた。自分はまだ譲る側だと自負していたが、ついにその時がきたのか。

       初めての   譲られし席    秋の暮       擬き

制約が発想を生む

  前々回の続き。湯島天満宮を後にし、一度訪れたいと思っていた鉄道高架下活用の商業施設「2k540 AKI-OKA ARTISAN」に向かう。ネーミングは"東京駅から2,540m,秋葉原御徒町の間に位置する「ものづくりの街」"を意味する。優れた発想力と意欲を持つ若手のクリエーターにプレゼンスの場を提供しており、ファション、雑貨、飲食等の50あまりの店舗で構成されている。立地と老朽化した鉄道施設というマイナス要因がこの発想を可能にしたと思う。年齢のせいもあり私の購買には結びつかなかったが、暫しの楽しい時間を提供してくれた。

個人的には"箱"に興味を惹かれた。古い高架下という事もあり、改修に当たって多々問題があったと思うが、シンプルな構造、高い天井そして柱頭のたくまざるデザインを上手く活かしていた。大袈裟に言えば、ヨーロッパの古い建物に入ったと錯覚した。この挑戦の行方を見守りたい。

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一番のお気に入りスポット?  2017/10/14

 

さらに日本橋に足を延ばし、三重県のアンテナショップで熊野古道伊勢路」の再生を続けておられる方の話を聞いた。熊野古道の引き出しを開けて閉店時間まで懐かしく聞き行った。

ところで以前大手デベロッパーが手がけた銀座の百貨店跡地の商業施設に入った。有名ブランドを集めた流石と思わせる出来上がりであったが、天井の低さによる圧迫感が気になった。ここでは地下に能舞台を設けていたが、唸らせる発想は伺われなかった。恵まれた好立地とそれに伴う地価が新たな発想を阻んでいると思わせた。

 

心で聴く

 

リタイアー後は一生活者として新聞は全国紙から地域紙に切り替えた。その新聞社が主催するフォーラム「知らない 知りたい 沖縄」に出かけた。

基調講演は本人曰く"自民党出身"の翁永沖縄県知事。「本土の人に沖縄県民の傷みを分かってもらえるのは容易ではない。現状では約八割?の人が日米安保容認の意思表示をしている。沖縄並みの基地を引き受けて貰えれば痛みは共有できる。その動きは起こっている。」と述べる。

パネルディスカッションでは、法政大学総長の田中優子氏が「ストレートにではなく、関心の高まっている文化・観光を通じて徐々に理解を深めるのが良いのでは」と提案する。

沖縄問題、そしてカタルーニャ問題は「民族の尊厳」に関わる問題と私は思っている。

後半は沖縄音楽のライブ。若手のミュージシャン上間綾乃さんが「ウチナーグチは分からないと思うが、耳で聞くのではなく心で聴いて欲しい」と前置きして歌い始めた。そして「ウチナーグチに"悲しい"と言う言葉が見つからない。それに近い言葉で」と前置きして「悲しくてやりきれない」を…

ネーネーズで知られた古謝美佐子さんは「ウチナンチューは賑やかではない。情けを尊ぶのだ。」と声高らかに歌う。心で聴けたのか、歳のせいなのか涙がにじむ。

ポルトガルリスボンでアルファマ地区にファドを聴きに行った。アマリア・ロドリゲスの知名度やファドが漁に出かけた男の無事を願う歌と知らされ女性歌手が思い浮かぶが、ここで聞いた年配の男性歌手の歌が胸に沁みた。歌詞の意味は理解不能であったが心で聴けた。その歌手は店の表に立っていたが、その風貌からてっきり"用心棒"と思い込んでいた。        "Me desculpe"

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 Cantor de Fado  2013/6/10