賀田から尾鷲へ

昨日も眠気に勝てず、13日分を夜が開けて書き始めた。

宿は小さな港の釣り客相手の民宿。前回雨に見舞われ行程が遅れ、近所の店で紹介してもらい急遽宿泊した。食事と主人のキャラクターが気に入り、今回もお世話になった。

そこで夕食のメニューであるが

前列左は超厚切りの鰹とハマチの刺身(後日訪問する庄次屋柴田さんの電話でサービス)、一つとばしてぐる/いか/えびのホイル焼き、鰹の手ごね寿司、二段目は樹齢400年の栃ノ木の栃餅の汁、お代わり無しのイカの塩辛、カサゴの煮付け、ふろふき大根である。そして最後に煮付けのあらに熱いお茶をかけた昔からの漁師料理。目の前の海で取れた魚は歯応えが違う。朝食に焼き魚が出たが今朝船の上で絞めたもの。名前は失念した。
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今日は伊勢路最高の八鬼山(647m)越え。各峠にはほぼ100m毎に木製の現代版町石が設置されているが、ここは63から零へ減少して行く。平地で100mは走れば十数秒だが、急な石畳の登りとスリップに気を付けながらの下りは時間がかかる。トータル4時間かかったので、休みを考えれば3~4分の勘定。

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登りの躓きと下りのスリップでつんのめったりしりもちをついたりはあったが、幸い転倒は避けられた。

平地に降り立ち県の熊野古道センターに向かった。所長さんは本日宿のお世話になる川端さん。5月には入院中であったがお会いしたく、訪問は今回の歩きの目的の一つであった。山歩きがお好きでサンチャゴにもご夫婦で数回行かれており、特に永年地域の歴史研究を続けておられ本も書かれている。更に私と同い年。私と共通点が多い。

センターは残念ながら古道から離れ、車利用の観光客向けのものである。総檜の立派な建物である。展示物も良かったがあえて苦言を呈させていただくと、本来の世界遺産の目的である"保全"に対するものとか、地域住民の過去からの関わりが見られず、私としては疑問符がついた。デイビッド・アトキンソンさんも同じ感想を抱かれると思う。ごめんなさい。

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現代版曼荼羅

表の芝生で若者たちがゲームをしていた。スエーデンの薪を使った遊びらしく、木の国に相応しいものと普及を図ろうとしているのか。

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所長の車で宿「アルベルゲ三帰来」へ向かう。スペインのアルベルゲがお気にりとかでご自宅の一部を一日一組提供されている。運良く今日は独り占め。
ご厚意でご夫婦のお住まいで共に食事をさせていただき、共通の話題で時間を過ごさせていただいた。有り難うございました。
お住まいは当然総檜。高い天井に頑丈な柱梁。今では大きくなられたお孫さんのための屋内滑り台。そして強力な暖房の薪ストーブ。

うっかり許可をいただかなかったが、ご叱責を覚悟でアップさていただいた。御免なさい。

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 賀田~尾鷲  晴れ 20.5km

 

 

 

熊野市から賀田へ

昨日は宿への到着が遅く、夕食に時間をかけた結果睡魔に襲われ、昨日分を今日の朝に書いています。

 

昨日は本宮大社からバスと電車で熊野市にやって来た。新宮の乗り換え時間は一分。走って駅に駆け込んだが途中で財布を落としたのに気付き、取りに引き返す。跨線橋を上がり降りし発車時刻を相当オーバーしたが、駅員が運転手に連絡してくれ、結果間に合った。本数の少ない駅で何故この様なダイヤを組むのか。

宿の前は七里御浜でその先には雄大な太平洋が拡がっている。日の出を拝むべく早起き。高齢者に早起きは全く問題ない。好天のおかげでばっちり。

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5月にご縁ができた方々に再会するに当たって、折角だからもう一度"伊勢路"を今度は逆方向に歩くことにした。今日は賀田まで六つの峠越え。伊勢路の峠道は大半が歩きには問題のある石畳。雨による道の保護のための昔の人の知恵であり、有り難く歩かせていただく。この地方は雨が多い上植林で地上が日陰となっており石は苔むしている。その為下りにはバランスを崩すとスリップし転倒する。前回の経験から出来るだけ脇の地肌部分を選んで歩を進める。見つからない場合ははすに構えジグザグ歩き。お陰で今日のところは転倒は免れた。でも雨に会えば転倒は覚悟しなければならない。前回転倒を避けようとストックを折ってしまい今回は残りの一本。それが効を奏して片手がフリーに成ったのもよかったようである。

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所によっては木の根のオブジェが生命力を感じさせる。

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今回は余裕をもってちょっと寄り道。長大な猪垣を見るべく観音道へ。名の通り道端には観音様。果無峠より古いようで嘗ては三十三体であったであろうが、少なくなっているようである。

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猪垣は山肌に延々と続き、住民と猪の戦いの跡が忍ばれる。
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嘗て中国の皇帝の命で不老長寿の妙薬を求めてやってきたと言われている徐福を祀ったお宮へと参詣道から海に向かって下って行く。
赤い鳥居が目に眩しい。
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 途中で見掛けた風景。母と子のキャッチボールを眺めるお婆さんの向こうには光る海。昭和の風景が残っている。

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宿近くに残っている築百年を越す小学校跡。入口脇には二宮尊徳像。時代の流れで幼稚園からり老人の施設に変遷している。屋根の上には東大の藤森教授の建築を思わせる草。

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南海地震津波に備え道路には水防門。

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苦しいながらも道程を楽しみながら、今日も無事宿に到着した。

熊野市~賀田  晴れ  22.5km

 

 

 

果無集落を通って本宮大社へ

熊野古道小辺路」は麓集落から1,000m強の峠を越えると言うパターンを繰り返して進む。

  高野山/\大股/\三浦口/\十津川温泉/\本宮大社

おまけに谷筋が急峻で、尾根筋に取り付くまでと尾根筋からの下りは足元の悪さも加わって難儀をする。

今日は観光客に人気の果無集落まで急な登りが続く。ところが着いてみるとバス停がある。納得…

集落の入口には獣避けの扉。そう言えば今回はあちこちで熊出没注意の貼り紙を見た。伯母子峠では小屋にいた人が外に現れた熊の恐怖を語ったと言う話を聞いた。

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集落内点描

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 軒先が参詣道

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田圃の脇に運動不足?の鯉


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早朝から道の補修

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厳しい労働の後には

宣伝されているほどのものではないが、無断で縁先を借りて宿の弁当を只一人で食しているこの時間に至福を感じた。

更に登ると足元に集落が目にはいる。ここまで来ると謳い文句の"天空の郷"が実感できる。雲海が加われば言うこと無し。
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道の脇には一定の距離を置いて三十三体の石像の観音さん。信仰の対象ではないが、立ち止まって眺めていると、それぞれ異なった表情が心を和ませてくれる。

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遠方に連なる山々の名は知らないが、まるで日本画

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といっている間に、本宮大社に到着し、今回のロングトレイルの前半は無事終了した。
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 マンホールではなくハンドホール

 

十津川温泉本宮大社  晴れ 15.0km 

 

三浦峠を越えて十津川温泉

 朝食にはお母さんが実家から調達した新鮮で大きな卵。何よりの御馳走であった。お弁当はでっかいめはりずしに手書きの手紙。素朴であるが行き届いたおもてなし。その気になったら是非訪れてほしい。「農家民宿政所」
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今日は標高400mから1,080mの三浦峠を越え200mの十津川温泉までのお決まりの歩き。

登りはじめて間もなく出会ったのは、永年にわたり何があったのか、奇妙と言うか摩訶不思議と言うか杉の巨木。普通だと゛なんとか杉゛と名前がついていそうなものだが゛無名゛である。

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尾根筋では斑模様の紅葉が目を楽しませる。
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後半は単調な車道歩き。気分転換を図りながら歩ききった。

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 老後の人生を楽しんでいると言うおっちゃん

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紅葉真っ盛りのけやき

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名前は知らないが色違いの紅葉

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柿以外の秋の果実も

 

楽しみにしていたつり橋は疲れで腰に力が入らず、上限左右の揺れに耐えきれるかと不安を抱えながら渡りきった。

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宿の屋上の露天風呂から小辺路最後のお楽しみの果無集落あたりに目をやりながら、一時を過ごした。

 

三浦口~十津川温泉  薄曇り  19.2km

 

 

 

 

日本二百名山伯母子岳

8日の記事です。

今日の宿は築300年の農家民宿。立派な薬医門を抜けると質素な外観の民家。屋内も特別な装飾はないがガッチリした柱梁が歴史を感じさせる。ここで77才の母とその息子夫婦が二間に客を泊めている。二組六人までであり、テレビで紹介されたこともありなかなか予約が取れない。WIFIは近所の廃校となった小学校まで行かなければならないので、一日遅れの発信となった。

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今日の行程はタイトル通りの山越え。かの田中陽気も通過した標高1344mの山である。宿(700m)からつづら折りの急勾配を一気に登りきる。昨日同宿であった岡崎から二人連れの山ガール?には瞬く間に置いてきぼりにされる。

登るにつれ気温がぐんぐん下がり強風と寒さでファスナーの上げ下げやカメラのシャッターもままならない。夕方のテレビでトランプの当選と共に春一番が報じられていた。頂上ではあちこちに白い花をつけた木々。近づいてみるとなんと樹氷?。

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強風に煽られ

 

下りは急斜面につけられた細い山道で、片方は深い谷に一直線。運が良ければ大怪我で済むと変な想像をしながら歩を進める。

樹木は杉の植林が大半であるが、間引きされた樹木がそのまま放置され、林業の現状を垣間見た気がした。

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集落を外れた山あいに旅籠跡や茶屋跡ががあちこちに残されており、嘗ての巡礼者の賑わいに思いを致す。

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伊勢路で見られたが石畳にもであったが、下りの石畳は最悪で、下りきったときには腰抜け状態であった。


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大股~三浦口  薄曇り  15.9km

 

 

 

 

女人道から小辺路へ

天気予報通り昼前から雨。今夜の宿は参詣道を外れている上、ドコモ以外は通話不可の為、バス停脇の公衆電話で迎えを依頼する。この電話、観音開きの箱に入っておりダイアルはジーコジーコ。宿について濡れた衣服を着替え洗濯を済ませ、近くの温泉に出かける。大きな窓の外は紅葉。ぬるまめの湯加減でついつい長湯をしたが、いつもの初動期の筋肉痛が若干緩和された。

今日は奥の院での生身供に立ち会うべく5時半起き。日の出が6時半なので外は真っ暗。燈籠の薄灯りを頼りに参道を進む。6時に空海さんの朝食が出発した。私も奥の院に入り一時間あまりのセレモニイーを間近に見聞きした。数えきれないほどの天井の灯籠のもと堂内に響き渡る般若心経。

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奥の院に向かう

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 奥の院からの帰途

ここでも紅葉が見られたが、こんな紅葉も良いものだ。
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女人禁制の為、嘗て女性が往来した女人道の一部を歩いた。結構険しい道である。

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尾根道なのは木立の間からその佇まいを少しでも窺いたいとの願いの表れか。

 

途中から小辺路に入り大股へと向かう。自動車道や林道の部分が多い上、途中から降りだした雨で景色を楽しむ余裕がない。

紅葉も部分的だったが、秋らしい眺めに出会った。


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雨の眺めも見ようによっては捨てたものではない。かってな思い込みだが、雨に霞んだ杉の木立に長谷川等伯の「松林図」を思い浮かぶ。

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ところで夕べの宿はゲストハウス。欧米でバックパッカーがよく利用する宿であり、日本でも徐々に増えている。バックパックの旅行経験者が始めている場合が多く、利用者のニーズに上手く対応している。即ち清潔でリーズナブルな低価格そしてコミュニケーション。かく言う私も愛用しているが、日本人の利用はもうひとつ。夕べも十数人の宿泊者がいたが、日本人は私一人。


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ゲストハウス高野山Kokuu


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入口上部の硝子窓の向こうに


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奥の両側に二段の木製カプセル

 

奥の院~大股  19.1km  曇後雨

 

 

 

真田丸から空海へ

夜行バスで大阪難波到着。三列座席のフルリクライニングで熟睡できた。スペインでは巡礼の後はもっぱら長距離バスを利用してあちこち移動していたので苦にならない。あちらでは夜行バスでも普通の観光バス仕様で、おまけにランドアバウトでしばしばツイスト状態になる。御の字である。

南海電車九度山下車。歴史は好きだが大河ドラマは興味を覚えない。でも真田庵を素通りするわけには行くまい。

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富有柿の産地だけにこんな風景も見られる。

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町の木は柿であり足元のマンホールも柿である。道端の無人店舗で六個くらいを100円。
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高野山の壇上伽藍から慈尊院まで一町(約109m)毎に石柱が180本。町石道として今では格好のトレッキングコース。

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針葉樹主体の為コース上では紅葉は楽しめなかったが、ゴールの高野山では平地では見られない濃厚な紅葉が待っていた。

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九度山高野山奥の院   24.4km  晴れ