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国境ーfrontera(西)/fronteira(葡)/frontiere(仏)

近年シリア問題から毎日のようにヨーロッパの国境が話題となっているが、日本では実体としての国境がないので、残念ながら半分他人事として見聞きしているのが実情だろう。
かつてのヨーロッパ旅行には国境越えが付きもので、地上をバスで越境の時には少なからず緊張感を覚えたものだ。特にドイツが二分されていた時代に、ベルリンの検問所でバスに武装した兵士が乗り込んで来た時には東西冷戦に直面し身を硬くした覚えがある。
サンチアゴ巡礼では数回地上から国境越えをし、それも徒歩で地に足をつけ国を跨いだ。
「フランス人の道」ではフランス南西部のサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからナポレオンがスペイン遠征の際に通った「ナポレオンルート」を歩き、ピレネー山脈を超え、スペインのロンセスバージェスを目指す。標高1430mのレポエデール峠の手前に仏西国境がある。国境と言っても「サンチアゴ・デ・コンポステーラまで765km」の石碑とローランの泉が有るだけで、国境を思わせる鉄条網も検問所も見当たらない。うっかりすると気が付かずに通り過ぎてしまいそうな佇まいであった。かつては軍隊が往来していた時期もあったが、今では 平穏そのものである。
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ピレネー山中の仏西国境の石碑

ポルトガルの道」ではポルトガルのバレンサからスペインのトウイへと進む。ミーニョ川を挟んで両方の街には城塞が築かれており、お互い睨みを利かせている。川に架かる鉄橋には、籠状の自動車道の両脇にやっと人一人が通れる幅のテラス状の歩道が付いており、歩行者はここを歩かねばならないが下を見ると思わず足が竦んでしまう。車道の上部には軌道が敷かれており、国際列車が行き来している。後日国際列車でここを逆方向に通過したが、車掌の検札もなくうとうとしている間に通過し、国境を超えたという実感は 全く無かった。
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西葡国境越しにスペインを望む
橋の両側の道路脇にはEUのマークに国名の入った看板が立っているだけ。
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スペイン側

「北の道」の出発地はスペイン北東部のイルン。ビダソア川の向こうはもうフランスの街アンダイエである。 マドリードから列車で到着し宿に落ち着いた後、ちょっとフランスまで散歩と洒落込む。橋の両側の街 並みは連続していて全く両者に 違いが感じられない。ご存知のようにこの辺りはバスク人の居住地で、両国の都合で住民の生活に関係なく国境と言う架空の線が敷かれているに過ぎない。スペイン側の道路脇の標識にはフランス語とバスク語のフランス側の地名の表記。因みに斜めの線はアンダイエはここで終わりを示している。EU統合により架空の線の意味は更に薄まったが、住民はそんな事は関係なしに過ごしてきているに違いない。バスクについては大いに関心があるが勉強不足のためここまで。
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西仏国境をフランスからスペインへ

「銀の道」を歩き終えスペイン南部を地中海沿いに西へバス旅。折角だからモロッコを覗いてみようとバスでマラガからアルヘシラスへと向う。途中ジブラルタルを経由する。ジブラルタルはヨーロッパ最後の植民地と言われ、現在はイギリス領。両国は領有について絶えずもめているが、地中海における海運上の要の地でありイギリスは絶対に手放そうとしない。バスは国境までは行かなかったが、両国ともEUに加盟しており自由通行が許され、万一に備えフェンスと検問所は有るらしい。
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スペイン国内からジブラルタルザ・ロックを望む

アルヘシラスからフェリーでアフリカに渡る。到着した所もスペイン。かつての植民地の残滓であるスペイン領セウタ。バスでモロッコのテトウアンに向う。ここには通常の国境がある。この辺りはスペイン経済圏の為、人や物の交流が激しく検問にバスの中で長い時間待たされる。ジブラルタルの様に実質上は検問がない方がいいのであろうが、モロッコはEU外でしかもイスラム圏である事から、敏感な対応はやむを得ない措置であろう。ガイドブックにはツアー客には出入国のスタンプが押されないとあったが、帰ってきたパスポートにはスタンプが押されていた。アフリカの地に足跡を残した証が得られたと思わずほくそ笑んだ。
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モロッコからセウタの街を望む

巡礼を通じEUの現状を国境という視点から地に足をつけて見聞できた。歴史や文化などを理解する上で地図上の国境は必要と思う。しかし旅行者の立場ではあるが、実態としての国境ない事の心地よさを実感できたと思う。