国境/Border/frontera nacional

 久しぶりに堀田善衛の著書を読んでいる。「スペイン430日  オリーブの樹の蔭に」と題する1977年〜1978年の約1年3カ月のスペイン滞在中の日記である。時は、フランコ将軍死去に伴い民主化への移行の時期である。しかし通貨がペセタからユーロに変わった以外は、私のスペイン放浪を追体験をする上で殆ど違和感を感じない。読んでいくうちに次の様な記述に出会った。

しかしスペイン本土からジブラルタルへは入れない。入るつもりならば、一度モロッコに渡ってそこから船で行くか、あるいはロンドンへ戻った上で、飛行機でしか入れない。歴史の因縁とはおかしなものである。         

 驚きを覚え、その背景を知るべくWikipediaで"ジブラルタル"を開いてみた。ざっくり言うと、占領と租借の違いはあれジブラルタルはかつての香港の様な位置付けであると私なりの理解をした。1704年のイギリスの占領以降両国の間で帰属についての駆け引きが続いている。1964年、その帰属をめぐって住民投票が行われた結果イギリス帰属が選択され、スペインは対抗措置として国境を封鎖した。1985年には封鎖は解除されたが、氏のスペイン滞在はまさにこの時期であった。

一昨年マラガからアルヘシラスへバスで向かう途中、国境付近のバス停のに寄った。EU加盟国同士の国境であったが、そこには高さは低いものの金網のフェンスが巡らされていた。

イギリスはついにEU離脱の手続きに入った。今後この壁は高くなるのか低くなるのか。

今にして思えば時間に追われる旅ではなかったので、チョット寄り道をしておけばと悔やまれる。

f:id:peregrino:20170329110509j:image