一期一会 ポルトガルの道

1913年5月1日、念願のポルトガルに足を踏み入れた。格安チケットの為アエロフロートのモスクワ経由で、LISBOAの空港到着は夜も遅く、メトロで宿の最寄駅に着いた時はすでに日付けが変わっていた。時差ぼけと情報不足であったがなんとか宿のベッドで寝ることができた。ポルトガルではバスや電車は地元の人主体であり、土日や祝日は便が極端に少ない。そこで後半のバス旅行の日程調整のため三日間市内をぶらつく。ある一夜ファドを聴きに「リスボンの下町」と言われるアルファマ地区に行く。2ドリンクで5ユーロと安い。日本ではアマリア  ロドリゲスがあまりにも有名で、ファドは女性が歌うものと思い込んでいたが、老若男女何人かの歌い手が次々と歌う。その中でも年配の男性の歌がサングリアで痺れた頭に滲みた。これぞポルトガルの演歌。漁に出かけた男の無事を祈って女性が歌ったと聞いていたが、歌詞のわからない私にとっては勝手ながらファドは中年男性のものだと思った。ところでこの男性歌手、店に到着した時入口脇で腕を組んで立っていたので、風貌や場所柄から用心棒かと思っていた。申し訳ない。帰りがけしばらく佇んでいると私に話しかけて来たので別れ際に一緒にカメラに収まった。

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基本一人旅を目指しているが、途中で話し合っているうちに何となく波長や歩きのペースが合うと、阿吽の呼吸で巡礼を共にする。お互い自分のペースで歩くが宿や食事を共にすることが多い。情報の少ない私にとっては大いに助けとなった。
5月4日に歩きをスタートし、6日目にAlvaiazereという人口8,000人の町のレストランで注文に悪戦苦闘していた時、二人連れのイタリア人が声をかけてくれ、無事夕食をとることができた。あくる日途中でこの二人連れに出会った。昨日の礼を言い暫く話しながら歩いた。私はイタリア語はダメ、彼らは英語がダメ。それでも何となくコミュニケーションができる。奥さん同士が姉妹で義理の兄弟で、定年後の趣味活動との事。この二人とは結果としてはSantiagoまでほぼ同行状態になるが、二人のやりとりを見ているとドンキ・ホーテとサンチョ パンサを彷彿とさせ退屈させない。兄貴分は手造りの一輪車にザックを乗せ、GPSでコースを確認しながら進むという一歩進んだ巡礼スタイル。
ところで昨年私が"北の道"を歩くとメールしたところ、彼も"北の道"を歩くという。時期もほぼ同じ頃。できたら再会できないかと日程調整をしたが、航空便の都合で若干のズレが生じる。お互い巡礼中にメールのやり取りで調整できたらお会いすることとした。彼が足の不具合から途中リタイアしたこともあり、残念ながら結果として再会はならなかった。
後日もう一人、フランス人が加わった。国家警察のOBで、南端のサグレス岬から15kgを超えるザックをかついできた剛の者。おしゃべりのイタリア人とは違い物静か。この男、前職からか私が道路の右側や車道側にはみ出して歩くと間髪を入れずイエローカード。小うるさいが安全を考えての事。感謝!私と同レベルの英語が話せるのでイタリア人との会話の通訳として重宝した。

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道連れとなったイタリア人(右の二人)とフランス人

ポルトガルへの再訪はないと思い、巡礼後にポルトガル各地をバスでまわった。その中に「ここにポルトガル誕生す Agui  Nasceu  Portugal」ポルトガル王国発祥の町 Guimaraesがある。私にとっては最も印象深い街。インターネットで見つけた宿 Hostal  Prime  Guimaraes は小さな宿だがこざっぱりした落ち着ける佇まい。それよりもお世話してくださったご夫婦のおもてなしが忘れられない。宜しかったらこの街の歴史についてお話ししましょうかといって話し始めた。話し終わった時には小一時間経っていた。決して長く感じなかったし、英語が得意でない私にもほぼ100%理解可能であった。易しい言葉でゆっくりと語ってくださった。自分の生まれ住んできた街が好きで,誇りに思っている気持ちが伝わった。Guimaraesを訪問される方にはお勧めしたい。

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ポルトガルで最もポルトガルらしい村」と言われているスペイン国境近くの村Monsantoへバスで出かけた。途中の町のバスターミナルで乗り換えバスを待っていた時に見かけた男。周りの人がプロサッカーの有名プレイヤーだという。それらしい雰囲気がある。バスが来たのでそれ以上の情報は得られなかった。その後他の町で何人かにこれは誰だと聞いたが、知っている人はいなかった。今だに誰なのか気になる。
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