やっとペース回復か

白馬~信濃大町  25km  晴れ

まずは昨夜の宿の紹介。オーナーは神奈川県のかたで30代で起業しほぼ30年。私の個人的実感として素泊まりの一人旅は歓迎されないようであるが、この宿は一人旅特に安全を気にする女性のそれ大歓迎を謳い文句にしている。建物はペンション風であり、備品・設備に至るまでご主人のセンスが徹底されているが、残念ながら宿泊者がついて行けないのか、あちこちに注意書が見受けられた。ドミトリーであれば二食付きで5,800円で写真の夕食と朝食(パンとスープがつく)。コストパフォーマンス抜群。全てご主人一人で調理。
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同室者は千葉の人で車であちこち一人旅。朝早く目覚めご主人推薦の姫川源流の親海湿原とオリンピックをのジャンプ台へ車で案内してくれた。一人旅同士の良いところである。
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雪山のパノラマをゆっくりと眺めながら歩き始める。
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墓石の黒いのが気になった

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至るところに石仏がある。昔の旅人はそれを道しるべにし安全を祈願しながら歩いたのであろう。
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建物の外周に大きな格子が組んである。推測するに稲を干すための柵であろう。
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大町の市街地に昔の塩問屋の建物を活用した「塩の道ちょうじや」と言う博物館がある。明治22年の大火で建て直しているが大きな財力を思わせる素晴らしい建物である。
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展示物に「ボッカ輸送規約」とあり、特急便として生魚を糸魚川から大町までのいくつもの峠越えのある80kmを24時間で運ぶとある。実際歩いてきたものとしてはとても信じがたい。アマゾンもびっくりである。

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ところで今日は計画の24kmを歩ききった。ほぼ平坦の道であったが、影を求めて道路を右へ左へと移動し、最も暑い昼過ぎは風通しの良い日陰で休息を取った効果があったのか。

 

農家ゲストハウス

小谷村瑞穂集落~白馬  11km  晴れ

昨日の宿「梢の雪」は滋賀県から来た30前後の若者と建物のオーナーが共同で経営している。

到着して休んでいると夕食の食材の野草採集の誘いがかかり、宿周辺の草むらへ出かける。その後皆で夕食の仕込みを済まし、温泉に出かける。車で20分で姫川温泉へ 。なんと昼間に悪戦苦闘の末たどり着いたところである。日帰り入浴であるが多くの入浴客で賑わっている。宿に帰り皆で夕食の準備完了。食事はいろりを囲み話が弾む。

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オーナーの蘊蓄の深い話は興味深い。寺の庭を思わせる囲炉裏の灰の模様にも一言二言。
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ところで同宿は富山からやって来た若者で、転職の合間のインターバル期間との事。何と軽トラでやって来た。後は名古屋から来た女性教師の二人連れ。

今朝は近所の養鶏場に出掛け地鶏の玉子確保。
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朝食は縁側で新緑を愛でながらの卵かけご飯。

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出発は九時半と遅く、これが後の行程に影響する。

今は田植え時で峠近くの田んぼでもその作業が見られる。この数日間まれに見る暑さで日中は屋外では軽く30℃を越えている。彼らは仕事であるが私は遊び。

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熱中症の不安と今までにない弱気が襲ったが、やっとの事で南小谷駅までたどり着いた。駅舎に入るとそこには何と畳敷の休憩所。えい、ままよと近くの店でビールを買い込み二時間後の電車まで昼寝。

目的地の白馬までの切符を買ったが、車窓に雪山のパノラマを目にしたとたん一つ手前の駅で飛び降り、最後の力を振り絞り宿まで歩いた。
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途中で見かけた中学校は、教育県長野らしさを感じさせるものであり、道路脇の石仏群は街道筋の点景として心を和ませてくれた。

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今日の宿は白馬の麓の整然とした街並みの続くみそら野の「風の子」。そろそろ眠気が襲って来たので続きは明日に。



やってしまいました!

塩の道温泉~小谷村中土瑞穂集落  18km?  晴れ

今日も雨飾山を眼前に見据えながら歩を進める。手元に資料がないので、深田久弥が何と表現しているかわからないが、私には毅然とした態度で単座している女性に見える。とにかくその姿が気になる。

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今日は標高860mの大網峠越えで今回のコースで最もハードな歩きである。そして遂にやってしまいました。身体がなれ7てない上にこの暑さで別の谷筋に下りてしまった。泣く泣くもとの登り道を引き返す。標識は結構設置されているが、最も必要な分岐点には不思議と見当たらない。文句を言っても始まらない。最終的には自己責任である。やっと地元の人に出会い軌道修正したが、1時間以上のロスと圧倒的な体力の消耗。やむ無く電車で二駅移動。結果本日の歩行距離26.5kmは約18kmに短縮。電車の便数が極端に少ないが運良く20分後の便があった。駅前の店で取り敢えず昼食のパンをと思ったが、今時そんなものは売れないそうで、品数は極端に少ない。湯を沸かしてもらいインスタントのうどんを掻き込む。

でも新緑の季節に相応しい景色にも出会えた。

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今日の宿は江戸時代末期の民家を改修した農家民宿のゲストハウス。私が歩いているルートから4km入ったところであるが、興味深いので予約した。現在八時。私以外の宿泊者が手伝った夕食が出来上がったと声がかかった。

食事が終わった時にはすでに九時半過ぎ。ご褒美のビールで眠りの誘い。魅力溢れる宿の紹介は明日に持ち越しとする。

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SALT TRAIL

塩の道起点~塩の道温泉  15km  晴れ

夜行バスで早朝6時前に直江津駅に到着。熟睡。電車で「塩の道」の出発地糸魚川に向かう。日本海は鈍く光っている。起点の標識は呆気ないほどシンプルである。

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昨年暮れの大火の復旧は今だしの観が深い。

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しかし新しい?雁木が希望を抱かせる。

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道路脇で休んでいた年配の女性が声をかけてきた。「最近猪や熊が出たので注意しなさい」。

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フォッサマグナミュージアムに立ち寄る。石フェチの方にはお薦め。

右に目をやると頂上付近に雪を残す北アルプス

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嘗ての塩の道も自動車道になっている。ウトウと言う人工的な窪地など昔の風情を残しているところもある。

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ジオパークには東日本と西日本の境界と目される断層が公開され、日本国土を改めて実感させられる。

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日本百名山雨飾山の姿を愛でながら歩を進め、本日の宿所「歩荷茶屋」に到着。皮膚に滑りを感じる温泉に一息いれる。

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塩の道トレイル

昨年熊野古道を歩いた時、途中の宿で高齢のご夫婦と同宿した。日本全国を車で出かけ、途中の駅近傍の駐車場に車を置き数日間歩き、元の駐車場に電車で引き返しながら旅を続けているとのこと。夕食の時「今迄で一番良かったところは」と尋ねたところ「塩の道」との答えが返ってきた。その時その名前に生活感を感じ何となく次はここかなと思った。

"塩の道"は嘗て塩を海辺から内陸に運ぶ生活上重要な道で全国各地に存在したが、一言で「塩の道」と言えば、昨年末大火に見舞われた糸魚川松本市を結ぶJR糸魚川線沿いの道である。懐かしいフォッサマグナをたどり、北アルプスの大パノラマを楽しめるという申し分のないトレイルである。安曇野では採れたての山葵を味わうこともできる。今回の選択に間違いないと思う。

19日 (金)から24日の六日間で約120kmと比較的楽な歩きであるが、年齢を考えゆったりと楽しんでくるつもりである。

私なりのアンテナに引っかかった事柄を、例により写真とともに毎日書き留めて行くつもりなので、興味のある方はバーチャルトレイルでご一緒下さい。

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ノラやクルや

            Inquiring about a Missing Cat

    Have you not seen a stray cat?

    Are you not keeping a lost cat?

It is a tom-cat,one and half year old, was around 8 to 9 pounds.   中略

If "Nora " returns home safely, 3,000 Yen will be offered to the person who gave the information.

It will be greatly appreciated.           「ノラやノラや」 内田百閒 (「ノラや」中公文庫所収)

飼い猫ノラが行方不明になり、悲嘆に暮れて新聞に折り込み広告を入れたが効果なく、出入りの植木屋の助言を入れてさらに外国人向けの折り込みを考えた。特に猫が好きというわけではなかったが野良猫の世話をする内に可愛さに絆され、昭和31年から歿年(46年)の前年まで失踪の顛末と後に住み着いたクルについて文章を発表し続けた。百間先生はまさに"猫派"の鏡である。

南蛮を放浪中も方々で猫に出会ったが、家猫は殆ど見られず野良猫を地域の人たちが面倒を見ている。従って人懐っこいが毛並みは余り綺麗ではない。

ポルトガルの南端の港町で失踪した猫のお尋ねのビラを見かけた。写真付きのためもあり極めてシンプルなものだったが、ポルトガル語版と英語版があった。この街は紀元前から大西洋・地中海海上交易で栄え、今では国際的なリゾート地となっている。

ヒョッとしてこの迷い猫の遠い先祖は大航海時代に船に乗って世界へと羽ばたいていたのかもしれないと妄想する。

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ポルトガル/ Lagos/20130608

 

 

いることの幸せ

何かをすることによって幸福感を得ようとする。しかし、幸福感が得られるのは、それだけではないと思うのです。何かをするのではなく、いるだけで幸せを感じられる場合もあるでしょう。「することの幸せ」でなく、「いることの幸せ」です。            「コブのない駱駝 」 きたやまおさむ  岩波書店

 私のロングトレイルは2012年の四国遍路で始まった。その目的は、よく言われる"自分探し"の旅ではなく、3年にわたるひざ痛のリハビリ結果の検証と頑張った結果の納経帳の朱印収集であった。幸い完歩ができ、高野山を含む89の朱印が集まった。しかし、回数を重ねた遍路から朱印の重ね押しで真っ赤になった納経帳を見せられるにつけ複雑な気分に陥った。

その後何かでサンチャゴ巡礼を知り、色々と情報を集め無謀にもその秋に一人でスペインに旅立った。その目的は ここでも精神的なものではなく、趣味のウオーキングを手段とした自分流の観光旅行であった。最初のうちはユックリと歩きながら見る田舎の風景やマイペースで味わうキリスト教文化に感動しきりであったが、日を重ねるにつけ新鮮さが薄れてきた。その反対に巡礼者や地元の人々との日常的な触れ合いに心地よさを感じるようになった。国籍、言語、宗教、文化等々異にしながらも共に時間を過ごすだけで不十分ながらもコミュニケーションが図れる喜びである。これは「なにかをして」得られたというより、「そこにいる」事により得られるものであると感じた。

昨今の世情を思うたびに身体のどこかで誘惑の虫が蠢きだす。

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フランス人の道  Carrion de los Condes 20120914