MOMATのいす、そして階段

美術の専門教育を受けてない人が、伝統や流行にとらわれず、自身の内側から湧き上がる衝動のままに表現した作品をアール・ブリュットアウトサイダー・アートと称し世界的に注目されていることを知った。東京国立近代美術館(MOMAT)/東京藝大/NHKが主催するトークセッション「人知れず表現し続ける者たち」が開催されたMOMATに出かけた。同タイトルのNHKドキュメンタリー番組上映後、パネラーにワシントンナショナルギャラリーシニアキューレーターのリン・クック氏と東京藝大美術館長の秋元雄史氏、モデレーターにMOMT主任研究員保坂健二郎氏でトークが始まった。日本では知的障害者精神障害者福祉施設におけるアートセラピーとしての作品と思われることが多い。しかし、欧米においては作者は社会不適応者、受刑者といったあらゆる種類のアウトサイダーたちが半数を占める。リン氏はこうした展示会でも作者の背景の説明はしないと言う。区別する事に意味が無いし、仕切りを設けるべきで無いと言う。パラリンピックの話を聞いたときにも同じような発言があった。美術作品鑑賞の幅が少し広がったと言う結論で話題を変える。

同館で開催中のMOMATコレクション展で、昨年開校100周年を迎えたドイツの造形教育学校バウハウスの特集をやっていた。そこには建築家ミースのカンチレバーチェア

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そして、同じくマルセル・ブロイヤーのワリシーチェア(左)が展示されていた。

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そういえ展示場内には来場者が利用できるデザイン性豊かな椅子があちこちに置かれていた。海外でも高く評価されている柳宗理のバタフライスツール

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テラスに置かれたチェアは、歩き疲れた身体を寸時休めるにはもってこいの座り心地。デザイナーは?

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目の前に広がる皇居東外苑の緑が過労気味の脳と目をリフレッシュしてくれる。しかし、左に目を移せば我こそはと背伸びをする大手町のビル群に疲れがぶり返す。

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片隅には場違いを思わせるこんな椅子も。

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そして、日本画の展示室にはその場の空気を配慮した和風のスツールが並ぶ。

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現代アートの展示室の椅子は何故か日曜大工が作ったと思われる脚の歪んだベンチが頑張っている。

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と、美術館では展示されている名画以外にも楽しむことが出来る。

建物の設計は谷口吉郎さん。私が愉しむといえば忘れてならないのは階段だ。

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洗練された姿のみならず床面の落ち着いた色は流石と思わせる。

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