日本の雪

先週雪かきについて触れたが、その"雪かき"に関する文章に出会った。

この国の五穀豊穣を神に感謝する祭事を、誰も見ていないところで、何人かの人たちが粛々と、骨身を削るようにして行っている。

「それがどうした」と思う人もいるだろうけれど、私はこういうのも一種の「雪かき」仕事なのだろうと思う。

そのしごとの意味や有用性について誰も保証してくれな仕事を、それを完遂しても誰からもねぎらいの言葉がかけられない仕事を黙って行っているからである。 「街場の天皇論」  内田 樹   東洋経済新報社

著者の天皇に関する著述を集めたもので、色々考えさせられたが別の意味でこの一文が頭に残った。

ところで昨年「塩の道」を歩いたが、松本市に近い安曇野を進んで行くと、道端の水路を音をたてながら勢いよく流れてゆくのに出会った。右手に展開する北アルプスの白い山並みから遥々と運ばれてきた雪解け水である事を思い、自然の大きな恵みを実感した。安曇野は山葵の産地である。清流が生育の条件である事から山葵田には農業用の水路とは別の専用の水路が開かれている。松本市の市街地では、かつての生活用水であった湧き水が今でも方々で見られる。「塩の道」では、北アルプスの雪が麓の里にもたらす恩恵を実感できると共に、豊かな水景を楽しめる街道でもあった。

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山葵田水路の源流  安曇野  2018/05/24