五月の雪

先週、箱根で季節外れの雪のニュースが報じられた。ここ数年の天候不順を思えば別段疑問の余地はない。

昨年フランスで季節外れの雪に襲われた。巡礼行4日目の5月12日、途中同行した二人連れのフランス人女性が突然明日は雪だと言う。私の語学力では詳しく確かめることは困難でありその場は聞き流した。

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ところが翌朝、目を覚まし窓に目をやるとなんと外は薄っすらと雪景色。

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雨も天候の内と天気予報はあまり気にしないが、後で確かめると強い低気圧が押し寄せ停滞中との事であった。普通であれば雨であろうが1,000mを越える標高の為雪となったのか。雪は止んでいたので朝食後予定通り宿を出る。雪の積もっていない舗装道路が続き歩行には全く支障がない。

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ところが一旦地道に入ると石が露出し凹んだ路面は水路となり歩き辛くなる。

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周りに目をやると放牧の牛が何も無かったかのように草を食んでいる。

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巡礼者もチラホラ見かけられる。特段の事もなく27kmの歩行の後次の宿泊地Nasbinalに到着する。

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翌朝も降雪はなく 緑の中を歩く。当日のルートは"Aubacの荒野超え"と言われ、巡礼路最高地点1,300mを通過する。嘗ては季節によっては 難所と言われていたが、この季節ではお花畑を楽しみながらのハイキングである。道端にはそれを示す写真が掲げられている。ところが不運にもこの時期ながら左寄りの景観が待ち受けていた。

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放牧場の柵を通り抜けると一面が冬景色に変わる。雪面には先を行く一筋の足跡が見えるが、周りには全く人影は無く、果たしてこれを頼りに進んで良いのか躊躇する。

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気温が下がり始め雪が降り始め始める。こうした事態を全く予測しておらず雨具の下の体は冷え込み、手袋の無い手はかじかみ、大袈裟ながら"八甲田山死の行軍"が頭を過る。途中、峠で見かけた小さな避難小屋に逃げ込み休息をしながら気持ちを落ち着かせる。

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下って行くにつれ雪は降り止み、やがて雪の無い地道にたどり着いた。辿り着いた集落のカフェで熱い珈琲を流し込み、やっと平常な気持ちを取り戻した。後から考えると死に繋がるような状況ではなかったものの、異国の地での一人旅であったが故の心境であった。しかし、寒さ対策はしていたが1,000m超える高地を歩く事への準備不足を痛感させられた。

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17kmの短距離ではあったが7時出発/16時到着の長時間の歩行であった。そう言えば、ひと一人見かけなかった。そして、Saint-Chely d'Aubracの宿の暖かいベッドで安堵の眠りについた。

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あのパリノートルダム大聖堂が!

街歩きの際に側を何度か通った。ある時、あの人混みを避けて中世の空気が残る路地に入った。振り向くと今は亡き尖塔と屋根が静かに佇んでいた。

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 塔の先端には運良く救出された風見鶏の影!