記憶のかけらー四次元のネコ

私は、旅行中に出会った事物の記憶の補助として写真を撮っている。したがってそれはある瞬間を記録した二次元の補助媒体である。しかし、後日写真を眺めながら旅行を振り返っていると四次元の記憶として蘇ってくるものがある。ネコとの出会いで振り返ってみよう。

 

現在の統合スペインの母体となった古都Leonの前泊地El Burgo Raneroの宿のアルベルゲに昼過ぎに到着した。お世話になるオスピタレロに「どこかいい所ある」と尋ねると「丘の上で眺める日の入りが美しい」と言う。4時過ぎに店で夕食を入手し出かける。そこではネコを相手に男性がベンチに座っていた。その姿を見ながら夕食をとりながら待つ。やがて一人になり7時過ぎに周りの景色が赤々と染まってきた。日の入りの美しさとともに、しばらくの間の男とネコのやりとりが蘇ってくる。

2012年9月16日 日の入りを待ちながら スペイン/El Burgo Ranero「フランス人の道」

 

迷路のような路地、白壁の家々とイスラム支配の影響が色濃く残るリスボンの下町アルファマ地区を目的もなくぶらつく。石畳の上に猫がいる。よく見ると一羽の鳥を襲っている。目の前のドアが開きおばさんが顔を出す。でも鳥を助けるべくネコを追い払う様子はない。ネコと鳥はお友達のようである。住人にとっては日常の出来事のようだ。私はそばに座り込んでしばらくの間アルファマの日常に浸っていた。

2013年5月3日 アルファマの日常  ポルトガル/ Lisboa Alfama  before「ポルトガルの道」

 

何度も紹介してきたが、La Romieu はネコの街である。家々の壁面にはネコの動きの瞬間の像が散在している。案内所の女性に「一体何匹いるのか」と尋ねたが、「あなたは何匹に出会えるかな」とかわされた。宿はこの街なので時間は十分にある。結果、15匹に出会った。出会えなかったネコがいるのだろうか。

色々なネコに出会いながら歩いていると、本物のネコが彷徨いているという錯覚に陥る。

2018年5月30日   ネコ ネコ ネコ    フランス/La Romieu 「ル・ピュイの道」

 

銀座の街歩きの一環として”gallery一枚の繪”に立ち寄った。そこで、”島田紘一呂展ー木肌に触れて”に出会った。猫の動きの一瞬を捉えた木彫が展開されていた。木彫とは思えない生き生きとした猫に囲まれて時間を過ごす。

眠りに目覚めた一匹の猫がこちらに向かって歩いてくる。

2021年9月10日 銀座の猫 日本/東京 銀座 街歩き

 

春と共に三匹の子猫がアトリエの前庭にやって来ました。暖かくなるにつれて懐き始めた三匹は、日々色々なポーズを見せてくれ、成長の過程を制作する機会を得ました。

  島田紘一呂