記憶のかけらー地域ネコ
集落を繋ぎながら巡礼路は続く。小さな集落では人影が少ないが、ネコたちが歩き回っている。飼いネコか野良ネコか判別はしにくいが、そんなことは意識せず地域の人たちの飼いネコ。いわゆる地域ネコとして住民たちと共同生活をしているようだ。
レオンの「ボティネスの家」、アストルガの「司教官」とバルセロナ以外でのガウディの作品出合い、その喜びを胸に500mの登りにかかる。一度廃村となったフォンセバドンで、廃墟に馴染んだ宿アルベルゲとバルが巡礼者を待っている。所謂住民は見当たらない。しかし、宿や店の従業者達と生活を共にする地域ネコたちが出迎えてくれた。
2012年9月20日 地域ネコがお出迎え スペイン/Foncebadon 「フランス人の道」
「谷間の真珠」と呼ばれる城壁に囲まれた人口800人の城塞都市オビドス。ここでも観光客以外に住民の気配はほぼ感じられない。しかし、城内に住み着いたネコたちは城の主人のごとく伸び伸びと昼寝をし、それが観光地の風景となっている。
2013年6月17日 我関せず ポルトガル/Obidos after「ポルトガルの道」
中世のヨーロッパには魔女狩りの時代があった。黒猫は魔女の使いという噂が広がり、黒猫の迫害や虐殺が起きていた。ラ・ロミューは「ネコの村」として知られる中世の街である。以前紹介したが猫と少女にまつわる言い伝えで街おこしをしている。家の壁面の作り物のネコたちの中で黒猫を見つけた。しかし、魔女の姿は見当たらない。古い街並みの中の黒猫はその容貌から中世の暗い歴史を思い起こさせる。
2018年5月30日 怪し!黒猫 フランス/La Romieu 「ル・ピュイの道」
熊野古道の帰路和歌山城に立ち寄った。石垣の上で黒猫が私を見つめている。じっと見つめる目は忍びの者のそれであった。
でも、日本では黒猫は、体は見えなくても闇で光る目から魔除けや厄除けのお守りとされてきたそうだ。
2016年5月25日 何物じゃ 日本/和歌山 after「伊勢路/中辺路」
ここに集めたのは、そんな旅の街角で拾った記憶の断片である。どれもいつしか指の間からこぼれ落ちて消えていってしまうような一瞬ばかりだが、私にはどれひとつ欠くことができない、人生の一片である。
「旅の断片」 若菜晃子/アノニマ・スタジオ