記憶のかけら–歴史的標識
巡礼路には巡礼者のための道標以外にも様々な標識に出会う。その中でも過去を刻むと思われる標識は、歴史に興味を覚える者を、長時間の歩行による疲れや単調な時間の流れを忘れさせる歩き旅へと誘ってくれる。。
高野山から始まる熊野古道「小辺路」を歩くにあたり、南海高野線九度山駅に降り立った。この地を選んだのは大河ドラマ絡みではない。弘法大師の母君は晩年この地の慈尊院に移り住んだ。大師のいる高野山は女人禁制の為、大師自らが母君に逢いに通ったそうだ。その道は「町石道」と言われている。約24kmの参詣道の路傍には今でも一町(約109m)ごとに設置された打たれた”町石”が静かに佇んでいる。
2016年11月7日 和歌山県高野山町町石道 熊野古道「小辺路」
スペインの「銀の道」にはローマ帝国の足跡が数多く残されている。Capparaの古代ローマ都市遺跡にはローマ街道、凱旋門そしてマイルストーンが残されていた。今では抽象的なビジネス用語となっている”マイルストーン”を目の前にして大きな感動を覚えた。ちなみに、1マイルは約1.6kmである。
2015年6月5日 Caparra スペイン「銀の道」
ポルトガルにもローマ街道が南北に縦断している。しかし、その遺構らしきものはあまり見かけない。新しいが気になる標識が目に止まった。ローマからの距離のマイル数をを示したものらしい。我流で翻訳すると「”ローマ街道 19” 33マイル」となるが?
2013年5月21日 Rubiaes ポルトガル「ポルトガルの道」
線路脇の小道を歩いていた。フランス語でも止まれはstopなのだ。「150m先に踏切があるから一旦停止」と理解して進む。左の曲がると線路に出会った。しかし、線路上には雑草が生い茂っている。廃線跡らしい。でも標識の新しさが気になる。先々レールが取り外された後に、この標識をみた人は何を思うのだろうか。それにしても蒸気機関車はいい。
2018年6月3日 Aire-sur-l'Adour フランス「ル・ピュイの道」
It is not where it is or what it is that matters but how you see it.
重要なことは、どこで見たとか、何をみたとかということではなく、どのように見たかということだ。
「ソール・ライターのすべて」 ソール・ライター/青幻社