出会った橋ール・ピュイの道-3

5月15日、昨日の白の世界から緑の世界に返った道を進む。Saint cheiy d'Aubracの集落と別れを告げる水路に架かるペルラン橋を渡る。巡礼路ではその一部や路上の建造物が世界遺産の構成要素として登録されている。中世に架けられたこの橋も登録されており、橋の袂に説明書きがあるが・・・

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少し高いところから見下ろすとグレー系の色調に統一された甍の波が一服の絵画を思わせる。

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目の前に教会の尖塔が現れた。「フランスの最も美しい村」のSaint Come d'Oltである。確かに美しいが”最も”と言いながらも150以上もある。

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標高300m台まで下り、村の中には久しぶりの川らしい川ロット川が流れている。

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途中見かけた教会に近づくとあの先頭の捻れは歴史のなせる技ではなくレッキとしたデザインであった。いかにもフランスである。

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川沿いに進むと前方に赤いアーチ橋が現れた。これも世界遺産登録のヴェー橋であり城下町の入り口としての風格を感じさせる。宿泊予定地のEspalionである。「フランス南部最初の笑顔」と賞され、”フランス北部からの禁欲的な巡礼路を辿ってきた巡礼者には理解されている”と言うが、私には理解の及ばない表現である。

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ロット川に架かる橋や川沿いの古い民家はまるで安野光雅さんの絵本を見ている様である。

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嘗ては皮なめし工場であった川沿いの建物の足元には川の水位に合わせた作業ができる様に石の階段が残されている。

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 宿では、車で巡礼中でポーランド居住の88歳のスイス人に出会った。各地の港で入港する船に出向く牧師として神戸にも住んでいたと言い、久しぶりに日本語で話し込んだ。

地方に行くと日本人は珍しいためかよく声をかけられる。日本にいた事がある、子供が日本にいるといった人達で、お互い英語が母国語でない事もあり共通の話題で話が弾む。

続く

 

旅先では、よほどのことがないかぎり話す相手がいない。せいぜいサービス業の人を相手に互いに片言の英語で必要なことを話すぐらいだ。

手紙を書いた相手はさまざまだが、主として四人に書いていた。日々の体験を伝えたくて書いていたということもある。しかし、それだけでなく、単に誰かに語りかけることでうちに向かおうとする精神の、そのバランスを必死に取ろうとしていたと言うこともあるような気がする。

   「旅する力」 沢木耕太郎/新潮文庫