出会った橋ール・ピュイの道-1

「 賢者は原点をしっかり見つめている。富士山を登るのに、海抜零から足でしっかり登る。」

「塩の道」を歩いた後に倉本聰さんの「愚者が訊く その2」で出会った一文である。

2012年以来幾つかロングトレールをこなしてきたが、もう一つ達成感が感じられない。この一文が暫くの間頭から離れず、ある時サンチアゴ巡礼の海抜零に少しでも遡ってみようと思いたった。フランス南部のLe Puy en Velayからすでに歩いていた「フランス人の道」のスタート地点Saint Jean Pied de Portまでの「ル・ピュイの道」740kmを選んだ。

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にわか仕立てのフランス語を頼りにプランを作りあげ、出発予定日の2018年5月5日を迎えた。準備万端整え家を出る予定の5時間前にHISから電話が入った。いつもの事前の見送りの電話と思い電話に出たところ・・・

「予定のエア・フランスが国鉄のストに同調してストに入り、仁川–パリ間が欠航予定である。乗り継ぎの仁川まで行って様子待ちをするか、それとも明日は飛ぶと言っている同便で出発するか?」

スケジュールの見直しが必要となると思い止む無く翌日の便を選択した。そして、パソコンとの格闘が始まった。事前に情報入手していた国鉄のストは現地に入らなければ詳細は分からないと覚悟をしていたがダブルパンチとなった。出発地までの三日間の鉄道旅を1日カットして、とりあえずホテルのキャンセルをした。海外での一人旅はいつ通行止めになるか分からない橋を渡り歩く心地である。

5月6日、第一の橋を渡り終え無事パリの土を踏むことができた。空港の駅で翌日のLyon行きは運休から外れたTGV便で繋ぐことが出来た。第二の橋は渡れる目処がついた。

Lyonでは観光コースからは外れている港湾再開発地区も訪れた。そこで出会ったレトロな橋は新しい建築群にも負けない存在感を感じさせた。

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5月7日、出発地のLe Puyに向かうべくリヨン・パール・デュー駅に行き、駅の案内所で運行状況を確認した。途中のSt Etienneまでは便があるがその先は動いていないと言う。考えても仕方がないので取り敢えず行けるところまで行くことにした。

St Etienneの駅前でさあどうしようと思案にくれていると、男の人が近寄ってきた。私の姿を見てもしLe Puyに行きたいのならバスの代行便があると駅前広場のバスを指差す。"Merci beaucoup"       神は我を見捨てなかった!!

到着時間は遅れたが明日の出発は可能となった。第三の橋も辛くも渡ることが出来た。フランス語し喋らないと言われているが、フランス語が喋れない私でもどうにかなるものです。

駅前では洒落た歩道橋が出迎えていてくれた。"Bonjour"

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続く

 

日常のドアを開け旅に出ることは、そのままココロの扉を開けることにつながる。

そしてそこから新たな出会いが始まるのだ。  

   「ロング・ロング・トレイル」 木村東吉/産業編集センター