出会った橋ーフランス人の道–2

 9月4日,Puente la Reina王妃の橋からEstella星に向かう。町の名に歴史の背景を残しロマンを感じさせる。歴史を消し去る日本の地名に虚しさを感じさせる。ブドウ畑の先の丘の上に中世の世界Cirauquiが浮かび上がる。

f:id:peregrino:20200818161313j:image

 更に進むと一瞬フリーズされたかの様な風景に包み込まれる。200mとごく短い長さであるが約2000年前のローマ時代の石畳の道が未だに息づいている。そこには小さな橋もある。映像や書籍で出会った歴史上の世界に直接浸れた事に興奮を覚える。

f:id:peregrino:20200817173459j:image

ゴールのEstellaで出迎えてくれたのはEga川に架かるCarcel橋である。アーチそのもののシンプルなデザインではあるが中世の印象を抱かせる。

f:id:peregrino:20200817173524j:image

橋の中央が盛り上がっている為、橋のたもとに立つと舗装面の多様なパターンが立ち上がり現代絵画のように愉しめる。

f:id:peregrino:20200819081050j:image

翌日9月5日は巡礼6日目である。目的地Los Arcosに向かう道の脇には刈り取られた干し草が高々と積み上げられている。何度かシャッターを切ったがどうしても右上りの構図になる。

 f:id:peregrino:20200818164756j:image

人差し指に力を入れる瞬間右側の腰を庇って無意識のうちに右半身が上がってしまう。出発から症状に差があるもののゴールが近づくと例の腰痛に襲われる。でも、様々の出会いへの期待が何とか前進を続けさせてくれる。

 

9月14日,この日も目的地のCarrion de los Condesに向かい身体を左に傾けたまま左方向に歩いていた。突然、後ろから声をかけられた。私の無様な歩き姿を見かねたのであろう。自分で使っていたストックを一本手渡し、これを使って歩けと言う。杖にも縋る思いでありがたい申し出を受け入れた。暫く話をしながら歩いて行くうちに、何と腰の痛みをすっかり忘れていた。崩れていたバランスが補正されたのであろう。宿が近づいたので礼を言いストックを返却した。

Carrionの町に入ると両側に店が続く。そして、その一軒に何とウオーキング用品専門店があった。早速店内に入る。こんな小さな田舎町にと思わせる品揃えである。迷う事なくlekiのストックをゲットした。

その時をもってこの巡礼から腰痛に別れを告げた。そして、今後に続く巡礼三昧に橋を架けてくれたのである。四国遍路ではお大師様のおかげを賜ったが、今回は十二使徒中最初の殉教者であるサンティアゴ巡礼の守護神聖ヤコブの ・・・・・・俄信者の呟きである。

 続く

 

どの民族においても、橋に対するイメージはだいたい共通している。橋は二つの異なる世界日常と非日常、此岸と彼岸を結ぶものであり、人生の困難の象徴であるとともに乗り越えねばならなぬ試練、また転換点であり、戦争における最重要地点、出会いと別れの場、ドラマの生まれる舞台である。

                   「橋をめぐる物語」中野京子/河出書房新社

 

毎晩8時になると目の前の"としまえん"の花火が鳴り響く。10分弱の短時間のイベントであるが、音を聞いているだけで何かホッとした気分になる。永年多くの人を楽しませた遊園地もいよいよ今月末で幕を閉じる。2023年に「ハリーポッター」でお目見えと正式に発表された。私としては、併せて整備される都の防災公園の方に期待をかけている。