スペインの裏側を読む

翻訳家でエッセイストの青山南の「60歳からの外国語修行 メキシコに学ぶ」(岩波新書)に三冊の本が紹介されていた。かつて、スペインがポルトガルと共に世界を二分した大航海時代の話である。世界史の授業では華やかな面が強調され、その裏で中南米で起こっていた出来事については殆ど触れられなかった。スペイン、ポルトガルを歩くに当たって関連する歴史を学んだつもりであったが、海外での出来事であったためか、多くを語られていなかった。改めて紹介された本を読んでみたいと思った。例により三冊の本を紹介する。

 

カトリックの聖職者であったラス・サカスが,十六世紀半ば、これは自分が見聞きしたことであって真実である、とスペイン国王に報告した「インディアスの破壊についての簡潔な報告」

スペイン人の侵略者たちがおこなった大改造プロジェクトとは、(中略)肉体的に抹殺するだけでなく、かれらがそれまでもっていた記憶と価値観をも抹殺するということである。

 

ウルグアイの作家ドウアルド・ガレアーノの「収奪された大地」

ラテンアメリカの富がいかにほかの国々に奪われてきたかを、ていねいに、かつ、ドラマティックに描いている。中略  なにより圧倒的なのは、インディアスからスペイン人が奪った金や銀はスペイン王国を潤すことはなかったという報告だろう。中略「三分の一近くはオランダ人とフランドル人の手にあり、四分の一はフランス人が握り……

 

メキシコのカトリック迫害についての本を書くという契約でメキシコへ出かけけていったのがイギリスのカトリックの作家、グレアム・グリーンである。メキシコを舞台にしたグリーンの「権力と栄光」が出たのは一九四〇年だが………

神父は逃げる。警部は追いかける。中略 メキシコ人の神父なら、自分の信仰の深度の事ばかり考えていないで、遠い昔にスペインからきたカトリック教徒がいかに先住民の宗教を抹殺していったか、いかに先住民をたわむれにころしていったか、におもいをめぐらしていいだろうに、ぜんぜんそっちのほうには頭がはたらかないのである。

グリーンにも「暑い」ではなく「熱い」がメキシコの激烈な印象として残っていた。私のスペインでの強烈な印象との共通点を見つけて、何となくほくそ笑んでしまった。

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コロンブスのイザベル女王謁見  グラナダ 2012/10/03