immobile
「世界報道写真展」を開催中の東京都写真美術館を訪れた。近年の世情を反映して中東の内乱やテロを題材としたものが多く、中には目を背けたくなるようなシーンも見受けられたがこれが現実である。
同時開催のインドの女性写真家ダヤニータ・シンさんの「インドの大きな家の美術館」と題する革新的な展示が興味を惹いた。屏風状の構造体に規格化された正方形と矩形のグリッドが組み込まれ、そこに多いものでは150以上の作品が配置されている。作品は人物が主体であるが、言葉で語ることを否定しており、縦、横、斜めのシークエンスから鑑賞者自らが解釈する。作家はキューレーターとして展示中随意に入れ替えを行う。側にはその為の作品が準備されている。展示室内での展示ユニットの配置換えも簡単で、展示場間の移動も容易であり、いわば移動式美術館である。
スペインの「北の道」巡礼路の途上のローマ人が築いた都市メリダで印象的なMuseo「国立ローマ博物館」に出会った。モザイクコレクションで有名であるが、私の関心はこの博物館が現存の遺跡の上に建設されていることである。館内に入ると嘗てのローマ街道が斜めに貫通している。さらに進むと床からモザイクで彩られた壁面が立ち上がっている。遺跡としての場所的な同一性だけでなく、2,000年の時間と空間が繋がっている。単なる遺跡訪問や博物館での鑑賞とは異なった空気感を覚える。いわば "immobile musium"とでも言おうか。
国立ローマ博物館(設計ラファエル・モネオ) スペイン/メリダ 2015/05/30
テレビで「プレパト」を視ていて突然浮かんだ"才能なし"の一句
熱きメリダ モザイクの壁 刻を編む