ガウディを訪ねてを終えて

念願のガウディ作品の訪問を終え、感じたことを写真の助けを借りながら文章にしてみた。多くの出版物や映像で紹介されているので、出来るだけ自分が見たものを写真で、感 じたことを文章で表現してきたが、生半可な知識、平凡な感性、そして貧弱な文章力で、結果はありきたりのものになってしまった。私個人の記録はここまでと諦めた。

最近、下村純一さんの「不思議な建築ー蘇ったガウディ」( 講談社現代新書) を読んでいて、私が感じ文章化したかったことを適確に記述されている文章に出会った。下村さんには申し訳ないが、その文章をもって私の総括とさせていただきたい。

 

不思議さの元は、彼の建築に備わった、動きにあるのではないだろうか。それは、リズミカルでスピード感や警戒感を呼ぶ機械的な動きではなく、うごめく、脹らむ、皺が寄る、波打つ、畝るといった、生物や大自然の営みに立ち現れる動きである。建築表現に動きが与えられることだけでも、ふつうでは考え難いのに、ガウディは、むしろグロデスクな印象を与えかねない不規則な動きを、積極的に表現の中に織り込んだ。建築は、昔から揺ぎない姿で立つものと決まっているのに、である。

 

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カサ・バトリョファサード

 

包まれるという印象も、またもう一つのガウディの不思議さといえる。ふつう、建築空間は壁によって囲まれるものである。それがガウディの建築では、カサ・ミラの玄関ホールやカサ・バトリョの階段室で見られるように、中に吸い込まれてゆく、あるいは袋ですっぽりとくるまれてしまう、そういった印象を強く人に与える空間に仕立てられている。壁に囲まれた四角い空間ではないのである。

 

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 カサ・バトリョの階段室

 

おっと、忘れていた。もう一つの"ガウディを訪ねて"があった。市街地内にありながらちょっとばかり外れている上、最も大人しい作品の為か殆ど注目を浴びていない「カサ・カルベ」(1898~1900)。地図を頼りに探し出会った人に所在を聞くがわからないと言う。やっとの事でたどり着いた。砂岩切り石積みの事務所兼住宅である。6年後に手がけるカサ・バトリョの原型を見る感じである。

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しかし、第 1回のバルセロナ建築年間賞に輝 いた完成度の高い作品である。

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 内部はバロック的な様式の装飾に溢れているとのことであるが、残念ながら非公開のため目にすることはできなかった。一階にはレストランが入っているが、営業時間外のためエントランスを外から眺めるだけ。

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 住宅エントランスの巨大なドアノッカー?が印象的であった。

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建築学校卒業後最初に手掛けた街灯が立っているレイアル広場にも立ち寄る。学校を出たばかりでこれだけのものを仕上げるとは凄い。周りの建物にも負けていない。

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そしてメインストリートの歩道に敷かれたタイルも忘れずチェック。特殊な工法で作られ摩擦に非常に強く、今でもしっかりと収まっている。。3枚並べると巻貝や人手そして植物らしきものが現れる。実際はもう少し青っぽかったと思う。カサ・ミラの内部の床にも使われていた。

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これでもう思い残すことはない。