I Have an Idea
7日、アメリカの建築家フランク・ゲーリー展に出かけた。最終日という事もあり多くの入場者で賑わっていた。建築を学んでいる学生と思われる若者、それも女性が目立った。又子供連れの若いカップルも目につき、かつて建築に携わった者として時代の移り変わりを痛感した。3時過ぎの退館時にも外では多くの人が並んでいた。
フランク・ゲーリーと言えば一昨年の巡礼時に訪れたスペイン北部のビルバオのグッゲンハイム美術館の設計者である。この美術館は展示物よりも圧倒的な高揚感を感じさせる外観で世界各地から多くの観光客を集め、産業の斜陽化で寂れかけた街の立て直しに大きく貢献している。入口付近に立ち止まって見ていたが、残念ながら観光客の多くは館内まで足を延ばさない。
エントランス
エントランスホールの吹抜け
かねがね、あのデザインをどの様なプロセスで実現したのか知りたいと思っていた。今回の展示でその疑問を明快に解き明かしてくれた。建築家にありがちな難解の言葉でなく、平易な言葉で語りかけており、模型主体のプレゼンテーションで理解が容易であった。そこで私なりの理解を簡単に整理してみる。
先ず"I Have an Idea"とある様に浮かんだアイデアを描く。まるで子供のイタズラ描き。(ポスター参照)
これを実現する為にモデルによる数かぎりないスタディを展開してゆく。
ボリュームチェックの為のキューブによる積み木遊びのようなスタディから始まる。
ボリュームチェックモデルと完成写真
次に紙、布、プラスチック、金属等を使ったモデルでシェイプ(単なる形ではない)、テクスチャー等をスタディする。
紙のモデル
スタディが完了したものを3Dプリンターモデルに起こす。ここがミソで単なるモデルでなく設計図、資材、施工、コスト、メインテナンス等の関連データが組み込まれる。ここからはこのデータを関係者とやり取りしながらさらにブラッシュアップし計画案を仕上げてゆく。時間の軸が入っているためか4Dデータと呼んでいる。
3Dプリンターモデル
そのデータを使ってクライアントにプレゼンテーションし、計画案の了承を得る。その場には普通立派な完成モデルがでんとすわっているが、プレゼンテーションモデルとして展示してあったものはいたってシンプルなもの。多分クライアントに自分のアイデアを理解し受け入れて貰うには余計なものは不要という考えか。
クライアントへのプレゼンテーションモデル
そして予算、工期等の諸問題で妥協することなく自分のIdeaを実現している。
生半可な理解と雑な説明となったが、興味ある方は出版物等で正しい解釈を。
帰途、神宮外苑のダイアモンド富士を思い出した。4〜6日とあったが青空が広がっており夕日がずれていても見ることができるのではと思い神宮外苑に足を向けた。日没1時間前であるが残念ながら富士山の手前には雲が横たわっておりダイアモンド富士は期待できない。でも多くの人が集まっておりカメラを構えて待ち構えている。素人らしいがプロ並みの望遠レンズの羅列である。目的はダイアモンド富士を自分の目で愛でるというより、立派な写真を撮ることにあると思われる。
地上から山頂と両翼を入れたダイアモンド富士を見ることができるのがここだけで、新国立競技場の建設が進めば隠れてしまうということでチョットした話題となったが、この現象は年2回起こるらしく、次のチャンスは今年11月とのこと。乞うご期待!