出会った橋ー銀の道-7

スペインはアンダルシアと言えば白い村を外すことは出来ないと、マラガからAlgecirasに向かう途中の山の中腹に静かに佇むMijasに立ち寄る。写真では見ていたがまさに白い村である。日照日数300日以上の日差しを和らげるために壁面を白一色の漆喰で塗り固めている。白以外は屋根の茶色である。絵具箱をひっくり返したような日本の街並みでは想像できない景観である。

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しかし、村に入り路地を歩いていると、壁面の鉢植えの色とりどりの花そして色タイルの路地や店舗のサインが、単調と思われる家並みに心地よいアクセントとなっている。そして、表面にできた歪みの微かな陰影が日差し日差しへの抵抗感を和らげてくれる。

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白い村を後にして先に進むと、前方に蛇がのたくった様な歩道橋が立ち塞がる。こうしたスペイン流にはもう驚かされない。

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アルヘシラスは左手にイギリス(実はGIbraltar)、向いにアフリカはモロッコを指呼の間に望む港町である。海外旅行もそろそろ年貢の納め時で、アフリカ大陸にも足跡を残したいとアルヘシラスからモロッコへの日帰りツアー参加した。

7月7日、地中海の船旅の証にと無謀にも杉本博司さんの「海景」の向こうを張って空と海を二分する写真を撮る。

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一度は彷徨ってみたいと思っていたスークは期待通りに迷路歩きを満喫できた。路地にひとり座るベルベル人の女性はミステリアスであった。無断撮影、ごめんなさい。

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スペインをバス旅でほぼ一周して7月8日にセビリアに戻る。途中、断崖絶壁の街で知られるRondaで半日を過ごす。小ぶりであるが現存するスペイン最古の闘牛場がある。闘牛そのものには食指は動かないが一度は闘牛場を覗いてみたかった。中に入るとアレーナ上には闘牛士も闘牛もいないが、その舞台装置に両者の戦いを思い浮かべることができる。強烈な日差しが描く影に、日向席の料金が安いことに思わず納得する。

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現在のロンダの基盤はあのローマ帝国スキピオが築いた。厳しい地形を敢えて選んだ時代背景がうかがわれる。街の真ん中に深い渓谷があり新市街と旧市街を分断している。その底部をセルビアを経て地中海に流れ込むグアダルキビル川が流れている。そこにかかる架かるヌエボ橋(新橋)は街のシンボルになっているが、18世紀の建造である。高いところに限らず低いところにも興味を覚え、サンダルばきで崖道を恐る恐る100m下り橋の下に立つ。今までみたことがない壮観な眺めである。

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少し上流にはイスラム時代に造られた古い橋ビエホ橋(旧橋)も残されている。この辺りの地形には厳しさがない為か、先生らしき大人に引率され子供たちが川の中を歩哨している。対照的に穏やかな佇まいである。

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 7月9日、街の周りに広がるひまわり畑と地平線の彼方まで広がる大平原を眺めるべく、セビリアから40km先の白い村Carmonaに向かう。嘗て国王の居城のあった城塞都市で同じ白い村でもミハスとは異にする景観を呈している。

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小高い丘の上に街並みが展開しており、現在国営ホテルParador de Carmonaとなっている断崖上の王城のテラスに立つと、目の前には地平線の彼方まで広がる広大なアンダルシアの平原が展開する。

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翌日、マドリードに戻り「ゲルニカ」に別れを告げるべくソフィア王妃芸術センターを訪れる。展示物は当然ながら、フランス人建築家ジャン・ヌーベル設計の赤い新館と共に、イギリス人建築家イアン・リッチーデザインのガラス張りのリフトが印象に残っている。来館者が天空の架け橋を行き来する様を眺めながら、旅の終わりに思いを致す。

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マドリードのストリートには身をもって表現をするストリートアーティスト?が溢れている。私が選んだベストである。右手一本であの図体を支えている。

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マドリードに別れを告げ54日に渉る長旅を終えた。四本の主要なサンティアゴ巡礼路を歩き終え、成田に到着した時にはこれで終止符が打てたと思った。

 

高橋 「写真作品の評価は、一枚だけでは成立しない。」という話を、どこかで読んだことがあるんです。いくつも見ることではじめて、そのフォトグラファーがどういう視点を持ち、どう切り取るのかが見えてくると言う事。

 「現代アートを楽しむー人生を豊かに変える5つの扉」原田マハ・髙橋瑞木 /祥伝社