飯野ビルの階段の?

TOTOの主催する若手建築家の講演会に出かけた。会場は内幸町の飯野ビルのイイノホールである。エスカレータで 4階に上がると 、ホールエントランスに対面する壁面に大きな壁面彫刻が現れた。抽象的なものであり、何を言わんとしているのかと暫く眺める。現代芸術は難解である。右下の斜めのノコギリ状のものだけは階段と言う具体的なものに見えた。最近、階段にこだわりを感じているせいかもしれない。

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現代芸術は取り敢えずあまり難しく考えず、自分なりに感じ解釈すれば良いと何かの本で読んだことがある。そして、作者の遍歴を知ることが鑑賞の助けになると聞いた事もある。

気になりながらも講演を聴講後帰宅し飯野ビルのホームページを開いてみた。同ビルは数年前超高層ビルに建て替えられ、イイノの森と称する外部空間や館内に国内外の著名アーティストによる作品が点在している。その中にこの作品が紹介されていた。改築前の建物にあったものを移設したらしい。しかし、添付の写真を見ると少し違う。

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右下の階段らしいと思っていた所に本物の階段が写っている。そうだ、これは旧ビルの時の写真だ。嘗ての旧ビルの記憶を階段で残しているのだろう。そして、更に階段で隠れていた所には新たな図柄が加わっている。。だが待てよ!作者の村井正誠さんは1999年享年93歳で逝去されており、新ビル完成時の2011年には生存されていない。つまらない推理を始める。

① 右下の階段状の部分も描かれていた原案?に基づいて再現した。

② 村井さんの弟子?にあたる人が氏の意を汲んで追加制作した。

③ 氏の生存中から建て替えが検討され、その際氏によって右下が加えられた。

④ 既に旧ビルに右下部分も制作されており、解体時に作品の右下部分が現れた。

⑤ 私が幻を見た。

本来の作品鑑賞を離れ陳腐な推理を愉しんでいる。再訪が楽しみである。

 

後日機会あり訪れる事があった。そして、まずは⑤は消去された。解決は難しくはないと思うが、謎はなぞのままに出会いの度に推理を楽しみたい。

 

イイノの森で見かけた作品"空を見るために"は私の好きな石垣であった。

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これも旧ビルの柱型に使われていた白御影石を光の塔(ミナレット)として再生したとある。夜間には光が灯るらしい。

そして、もう一つピロティの防風スクリーンを兼ねた作品"大海原に浮かぶ自由な雲"。

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HPの写真を見ると内蔵するLEDライトの変化により幻想的な雲を出現させるそうだ。

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明かり灯る頃の再訪の楽しみも加わった。