続・ミュージアムを愉しむー階段編

NHK日曜美術館で上野の"国際子ども図書館"の展示会"絵本で見るアートの100年ーダダからニューペインティングまで"を紹介していた。展示の中にダリ、アンディ・ウオーフォール、キース・ヘリングバスキアそして草間彌生奈良美智と言った馴染みの画家の作画のものがある。明治時代に建てられた旧帝室図書館を転用するに当たっては修復復元に安藤忠雄氏が関与しており、建物にも見所が多いとの事で、これは見過ごすわけに行かないと年明け早々に出かけた。

 展示には子どもに帰って楽しめた。以前紹介した展示会"エドワード・ゴーリーの優雅な秘密"では絵本を手に取ってページをめくることが出来た。しかし、残念ながらガラス越しに表紙を眺めるだけであった。展示室のインテリアは見事に修復されていた。しかし、もう一つ残念な事に例により撮影禁止。

展示室内を一巡しの後もう一つの楽しみである建物を見て回る。既存部分の背後に新しく増築された廊下部分と既存の修理復元部分が違和感無く収まっている。

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修復された展示室内部を撮影可の廊下から扉越しに内部を撮影しようとすると、係員が慌てて飛んでくる。鑑賞の邪魔をしていないのに何故だ。しかし、"蛇道は蛇"で裏の方に回り込みガラス窓から撮影成功。皆さんにも共有して欲しかった。

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更に、松濤美術館の経験から階段室に向かう。アメリカから輸入された鋳鉄製の手摺りの階段がそのままの姿で残されている。漆黒の塗装が力強さと共に場所に相応しい静謐さを感じさせる

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さすが,国立であるだけに立派な出来上がりで期待を裏切らなかった。

 

隣接の"黒田記念館"に立ち寄る。重文の"湖畔"を初めとして黒田清輝の代表的な作品がひっそりと展示され、一人向き合って静かに鑑賞できる。係員はいるが「撮影禁止」とか「離れて」とか肩苦しいことは言わない。

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これも重文の「智・感・情」

中央の吹抜けの階段はシンプルなものであるが、ちゃんと存在感を感じさせる。

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 "東京国立博物館で高御座の特別公開があるということで、話の種にと立ち寄る。入口に向って長い行列が出来ている。リタイヤ後は曜日感覚が希薄となり、その場に立ってやっと日曜日であることに気づく。でも30分弱で入場出来た。高御座はテレビ等で何度も目にしてきたが、実物を目の前にしても特段の高揚感は生じない。しかし、周りは騒然としている。

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背後に回ると 階段があり、艶やかな敷物が台上へと導く。

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博物館のエントランスホールでは石造りの階段がドッシリと構えていたがただそれまで。後日来館しても目にすることはできないが記憶に残る階段に出会えた。

皇后陛下のお召しになっていた御五衣・御唐衣・御裳。特段豪華さを感じさせないが、背後に広がる裳(も)は地味ながら印象に残った。

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因みに、裳(も)とは「平安時代以後の女房の装束で、表着(上着)や袿(うちき)の上に腰部から下の後ろだけにまとった服」である。   

 

さらに、閉館まで時間のあるコルビジェ世界遺産"国立西洋美術館"に立ち寄る。作品鑑賞は当然ながら、内部を彷徨うだけで楽しめる美術館である。常設館のエントランスからはスロープで展示室に向かう。

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スロープと言えばイメージは異なるがバルセロナで訪れた現代美術館の大胆なスロープが思い出される。

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 展示室を進むと突然床に映り込んだ階段が目に入る。

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 正面に回り込むと細い階段がなんと無く上階に繋がっている。でも、上ることは拒否されている。

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謎は謎でそのままにしておく。

 

年末のNHK日曜美術館で"デザイナー 皆川明 100年つづく人生(デザイン) のために"に出会った。氏は流行にとらわれないデザインとものづくりで注目を浴びている。ファションに特段の興味がある訳ではないが、皆川さんの日常に根ざした生活に関わるデザイン活動に強い共鳴を覚えた。木場公園の"東京都現代美術館"で開催中の展示会「ミナ ペルホネン /皆川明 つづく」に出かけた。一般人には馴染みの薄い現代美術館にも関わらず年配の女性で賑わっていた。デザインにおけるサステナビリティを実感した。

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展示室を繋ぐ回廊で記憶に残る階段に出会えた。ガラスの手摺りへの映り込みは建築家が意図したものであろうか。

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