六本木から上野へ、そして

又々、テレビ番組情報に促されての街歩きである。「ぶらぶら美術館・博物館」の山田五郎さん御一行が、上野の東京国立博物館で開催中の住友財団修復助成30年記念「文化財よ、永遠に」と題する特別企画展を訪れていた。

久しぶりの快晴の11月末,六本木のFUJIFILM SQAREに向かう。先ずは、ヒッチコック、デヴィット・ボウイ、スティーブ・ジョブズといった時代の寵児を撮影し、「ポートレートの巨匠」として名高いアルバート・ワトソンさんの回顧展。偉大さを美しく切り取っている。

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 誰だかわかりますか。1898年撮影の若き日の坂本龍一さんです。

そして、あの円谷幸吉さんを含む5人のアスリートの「走る」という行為に人生を賭けた、栄光と苦悩、挫折の軌跡をビジュアル化して、KYOTOGRPHIE 2019ポートフォリオレビュー賞を受賞した関健作さんの作品展と 、その一人である世界陸上400mハードルのメダリスト為末大さんとの対談。直に話を聞くと色々と考えさせられる。毎日の様にテレビや新聞で派手に取り上げられているラグビー選手。そして、オリンピック後の選手達に思いを致す。

 

場所を移して湯島の近現代建築資料館。嘗て、東京駅や大阪駅の駅前広場に立った時、最近のビルの様な過度な自己主張は無いものの、ちゃんと存在感を保持していた中央郵便局。その設計者の「吉田鉄郎の近代」と題する展示とギャラリートークは一見して建築関係者と分かる一団で賑わっていた。

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東京では、今は亡き鳩山邦夫さんの一声で辛くもファサードだけは生き残っている。と嘆いている私の撮った写真では下に沈み込んでいる。

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大阪では、今や跡形も無く空き地然としたまま?再開発を待っている様である。

ヨーロッパでは古い建物は内部は現代に合わせて改修するも、嘗ての街並みの一部として残されている。

 

有難くも国立東京博物館本館には70歳以上は無料で入場できる。主として東日本大震災等の災害で損傷し住友財団の浄財に寄って修復された仏像群が一堂に会している。

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一部重要文化財が含まれるものの、修復資金が儘ならぬ地方の仏像が大半で、所謂脚光を浴びる観光仏像ではない。しかし、平安時代前後の古いもので、長い歴史の中で施された着色は取り除かれたこともあり、本来の素材感や素朴な風貌は、これまで見てきた仏像とは違ったものが感じられる。最も魅了された仏像は9世紀福井の高成寺蔵の重要文化財千手観音菩薩立像出会った。(パンフ左)華やかさを漂わせる千手。そして、顔や腹部に見られる木目。

 

隣の東洋館の前に特別展「人、神、自然」とあり、予定外であったが入館する。世界各地の古代文化が生み出した多彩な工芸品の展示に目を見張る。他の博物館では感じたことがない人間味が感じられた。

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パンフレットによると

"古代の人々は、自分たち自身をどのように表現したのでしょうか。神々や死後の世界、自然界をどのように認識したのでしょうか。古代の工芸品には、当時の人々の意識や世界観が投影されています。"

余談であるが当館の所蔵品展と勘違いし、海外の博物館に見られる収奪品?と感じかねない所蔵品と思い、日本も・・・・。スタッフに聞いたところ、カタール国の王族のコレクションとの事であり、事前の予備知識の不備とは言え妙な安心感を覚えた。

常設展は中国、朝鮮を中心に展示されており撮影可能であった。頭部のみであるが中国後漢時代の巨大な石仏の微かな微笑みなに目が止まった。

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上野に向かう途中、不忍池水面の立ち枯れた蓮の葉に冬を感じ、

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青々とした初夏の風景を思い出し、時の経つ早さを実感した。

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先日、久しぶりに白金台の庭園美術館を訪れた。そこでは未だ色濃く残っている秋の佇まいを楽しめた。

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展示は「アジアのイメージ」 と題し、大陸から輸入された古典美術とそれに憧憬の念を持つ日本の近代のアーティストの作品を並列しながら鑑賞させるものであった。

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中でも現代作家による今も生き続けている"東洋憧憬"をイメージさせる作品は興味深かった。

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あまりにも綺麗な仕上がりに、迂闊にも樹脂製でフォルムをメインとした作品と思った。しかし、漆芸家田中信行さんの作品と知り、薄っぺらな知識と低レベルの鑑賞眼の自分に情けなくなった。近づいて様々な角度で暫くの間眺めていると、漆の奥深さが染み渡ってくる様な感じに襲われた。