錯を愉しむ

場所は明治大学博物館。視覚上の錯、所謂錯視。仕掛け人は明大研究特別教授の杉原厚吉氏。

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実は「見えているのに見えていない! 立体錯視の最前線」と題する特別展に出掛けた。日常生活での素朴な感覚である"錯視"を"現象数理学"という数学で解き明かしたものの展示である。ギャラリートークでの先生自らの 種明かしを私なりの理解で復元すると

立体錯視誘発の要因として、

・奥行復元の自由度ー網膜には奥行きの情報が無い。無い情報を読み取るのだから間違える事もある。即ち目の錯覚である。直角の多い環境で生活するうちに、物を直角に見るようになる直角大好き"人間が出来上り,奥行復元に大きく影響する。

・視点位置の自由度ー 同じものでも見る位置によって違って見える。

そして、視覚の素朴な常識を裏切る衝撃が起こる。

・その後本当の形を知っても、知覚を修正できない。そして錯視が再現する。

・両目で見ても錯覚が起こる。因みに、カメラで覗くと 片目なので簡単に錯視が起こる。

展示されている変身立体を幾つか紹介する。

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<不可能モーション立体>   同一平面の窓に突き刺さる真っ直ぐの棒???

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<トポロジー錯乱立体>   鏡に写ったものは別物???

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<軟体立体>   鏡の中の矢印が反転???

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<透身立体>   鏡の中の形が変わり,鶏が上に移動???

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<不可能モーション立体>   三つの斜路と階段は中央に向かって登る立体模型。周辺の囲いは平面に描かれた絵???

これらの立体模型は浮かんだ発想!!を数式に置き換え、その数式に図形上の頂点の座標を投入し、解く事が出来れば製作可能との説明であった。右下には製作の元になった数式との事であった。理系でありながら数学が苦手の私には全く理解不能である。

 立体錯視の研究は実社会でどのように活用されるか。錯覚によって生ずる危険への安全対策、例えば交通安全対策等であるとの事。因みに、サッカーのTV中継でコートの周囲の囲いにコマーシャルが映し出されるが、実は地平面に平行四辺形の映像を映したものであり、錯覚を利用し選手の安全を配慮しバーチャルな壁だそうだ???

未開の地には直角は見当たらないと思われる。では、そこに住む人には錯視は生じないのか。実験をした結果、やはり錯視は発生したそうだ。現地を確認したところ、周辺環境には予想に反して直角が存在していたとの事。しかし、生活経験の浅い子供で実験したところ、錯視が発生しない結果が得られた事があったそうである。

我々が目にしている現象?が現実なのか?  一抹の不安を覚えながらもおおいに愉しむことができた。