学生に戻った

 「私立大学研究ブランディング事業」とやらで法政大学に発足した"江戸東京研究センター"が学外に開放しているイベントに参加すべく市ヶ谷キャンパスに通学?している。センターの設立趣旨には「都市東京のこうしたユニークな特質を生み出す基層構造をハードとソフトの両面から解き明かし、西洋型の都市モデルとは異なる21世紀にふさわしい都市のあり方を研究していきます。」とあるが、私の参加動機は主催者には申し訳ないが、趣味の歩き活動の一環と言う単純なものである。

今回、外濠開削400周年に当る2036年に向けて、「外濠の再生とその周辺のまちの魅力づくりの実現に取り組みたい」と、センターが主導して周辺の大学や地域で組成された「外濠市民塾」主催の"外濠浚渫工事見学会"に参加した。

肩苦しい前振りが長くなったが、実際の工事状態を見学することから、早朝 8時半法大大内山校舎に集合し、工事発注者と工事請負業者の事前説明を聞く。参加者は学生を中心とした塾関係者の他、外部からの参加希望者先着40名。女性も多いし子供の姿も見える。四つのグループに分かれ表に出て30度を超える市ヶ谷濠の土手の上の緑道を進む。所々に木陰があるが兎に角暑い。

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前方に浚渫工事現場が見えてきた。吸い上げた浚渫土は濠を伝い東京湾の埋め立て地まで運ばれるが、濠の幅員や一部埋め立てによる暗渠化の為、ヘドロを運ぶ土運船が途中までしか入ってこれない。そこで浚渫現場から土運船への積み込み現場までパイプを敷設し圧搾空気で圧送する。滞りなく送る為ヘドロと水がほぼ半々の状態である。パイプの長さは着工時は2kmを超えていたが、来年2月完了に向けて工事が進んでおり現在は1kmとの事。という事は熱中症を起こしかねない暑さの中1kmの歩行が待ち受けている。

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途上、お約束の江戸城市ヶ谷御門(市ヶ谷見附)の石垣に出会う。御門再建の動きもあるようだ。その際にはデザイン不調和の街灯はお役御免となるだろう。

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 飯田橋駅には地元の反対を押し切って濠を埋め立てて建てられた再開発ビル。この部分で濠は地表から消える。当時の地元関係者が参加していて怒りを再燃させながら当時の事を話す。かつて濠のセンターに千代田区と新宿区の境界があったが、境界線上に住宅棟とオフィス棟が建てられた。前者を千代田区が後者を新宿区が取ることで話がついた。その証が建物内の床面に残っている。かつての境界線が90度回転している。

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エントランスロビーに外国の児童の描いたコウノトリの絵を見つけた。世界の子供達が参加したコンクールの発表展示だ。

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濠の水面上にはヘドロ搬送パイプが続く。前回のオリンピックの際にお堀端は近代的なコンクリート護岸に変わり首都高が蓋をしている。水面にはやけにくっきりと護岸上のビルが写り込んでいる。そしてメタンガスらしき気泡が一面に沸いている。

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やっと小石川橋の積み込み作業現場に到着。はるばる送られてきたヘドロはココでパイプから土運船へ吐き出される。ダンプ10台分?のヘドロが積み込まれ東京湾へと向かう。途中の濠が狭く護岸への接触を避ける為 前方の牽引船の他に後方にも船が配置される。

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見学はここまで。ヘドロ埋め立て現場では海水汚染防止の為、海底まで届く囲いの中でヘドロを排出する。

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送られてきたヘドロと水を採取して見せてくれた。今日はチョット色が薄いと言っていたがやはり真っ黒といった印象である。途中で見た建物のクッキリとした映り込みに納得がいった。匂いも嗅いだが戦後のガキの頃の遊び場のドブを思い出した。

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無事、全員熱中症は回避して見学を終え大学に戻りグループに分かれてワークショップにも参加する。

久し振りに学生時代に戻った半日であった。

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最近、あらゆる事がオリンピックにかこつけて進められている。外濠通りもオリンピックのマラソンコースに当たっており、海外から応援に駆け付けた人達に汚れた濠を見せたくない為オリンピックを目標に工事を進めていると胸を張って語っていた。へそ曲がりの私はオリンピックが通り過ぎた後の事が気にかかる。