一年金受給者 日常の文化的生活 part2

毎月第三水曜日には主要な都営のミュージアムに高齢者は無料入場できる。因みに欧米では美術館と博物館を総称してミュージアムと呼んでいる。別々に呼称する日本との認識の違いはーーチコちゃんに聞いてみようか。

 

 その日に合わせて地下鉄とバスを利用して恵比寿ガーデンプレイス東京都写真美術館に向かう。電車や歩行での移動と異なった視点やスピード感で街を眺められるバスを時々利用する。

毎年楽しみにしている"世界報道写真展"を開催中である。日頃の報道では見られない鮮烈な映像が大きなカラー写真で展開され、世の中の動きに改めて立ち会うことができる。

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パンフレットの写真は大賞受賞の作品である。メキシコ国境の一場面である。多くを語らなくても伝えたい事が伝わってくる。

別の階では以前紹介した「楽園へのあゆみ」のユージン・スミスのフォトエッセイ「カントリー・ドクター」が展示されていた。

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プロの写真家の作品には及びもつかないが、撮影するときの心構えみたいなものは少しずつ学んでいるつもりだ。

写真美術館と言えば昨年パリで滞在した宿の向かいにヨーロッパ写真美術館があった。前庭が日本人の作庭家の作品である事に、方々で出会った日本人芸術家の活動を改めて認識したのを思い出す。

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裏道を南へ歩き目黒に向かう。次の目的地は東京都庭園美術館である。 "キスリング展  エコール・ド・パリの夢"を開催中。キスリングに就ては特段の関心は無い。残念ながら予想に違わず私の嗜好には合わなかった。しかし、女性には愛好家が多いのかおめかししたシロガネーゼらしきご婦人方が多く見かけられた。

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 これまで、この美術館には何度も訪れているが、アール・デコの空気に包まれて過ごせただけでも来館の価値は充分にあった。

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帰路、目黒道路脇に小綺麗な公園を見かた。"白金台どんぐり児童公園"とある。児童公園にしてはやけに広い。後で調べると面積は6,000㎡強である。平日の午後5時前であったせいか大人、特に高齢者が多く子供の姿はチラホラである。高齢者向けの健康遊具は目に入るが子供遊具はーーあったあった。 

どう見ても私には大人の公園に思えた。

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然るべき作家の作品らしきファニチャーも見かけられる。流石港区!と感心すること頻りであった。決して港区役所に何かを言いたい訳では無く、我が家の近くにもこんな公園が有らまほしと思っただけである。

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ところで、最近持て余す時間にかまけてジャンルを気にせず本を乱読している。そばに置いて気の向いた時に手に取りたいと思う本は書店で購入するが、本棚の収容力も考慮して大半は図書館のお世話になっている。今ではネットで在庫を確認でき、最寄りの図書館にない本は他の図書館から取り寄せてくれる。更に新着案内も毎日届く。予約しておけば余程の人気のものでない限りそんなに待たなくても手にすることができる。最近読んだ本で年初に亡くなられた橋本治さんの「草薙の剣」を興味深く読んだ。高齢者が自分史を振り返るに当たっての物差しとして格好の読み物と感じた。

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内容につき私が説明するよりもと思い、少し長くなるがカバーに書かれた文を記す。

 

これは、橋本治の「平家物語」である。

10代から60代まで、10歳ずつ年の違う男たちを主人公に、彼らの父母、祖父母間でさかのぼるそれぞれの人生を、戦前から平成の終わりへと向かう日本の軌跡のなかに描き出す。敗戦、高度経済成長、オイルショック、昭和の終焉、バブル崩壊、二つの大震災、みな懸命に生きながらも親と子は常に断絶を抱え、夫婦はしばしば離婚する。人生はつねに、思い描いたことの外にある。ーーごくふつうのリアルな日本人の心の100年を描いて、読者をさまざまな記憶で強く揺さぶりながら、戦後日本のゆきついたさきとして現代のありようを根底から問い返す。橋本治、◯生の長編小説。作家デビュー40周年記念作品。

(◯は田の下が幸らしき漢字であるが、不肖私には読めない為辞書を調べたが見つけられなかった)