石垣を読む

 テレビでお城の石垣の話をしていた。上にゆくほど反り返る勾配を描いている。この線形には二つの意味があり、一つは敵が登りにくくし敵の侵入を防ぐ、二つ目は内側からの圧力を外部に逃して石垣に強度を加えるためと言う。結果として美も生み出した。

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熊本城(借り物です)

では、その線形はどのようにして割り出したのか。石垣の上下端に縄を垂らして出来た曲線を反転したとの事。そこで、ガウディがコローニア・グエル教会堂設計の際に行なった「逆さ吊り実験」(紐に重りをぶら下げて出来た自然な弧が描く曲面を上下逆さまにして、荷重を合理的に分散する形態を求める実験)を思い出した。

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地下の礼拝堂は実現していたが、残念ながら上部の教会堂は未完のままであった。

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ガウディは名も無き日本の職人のアイデアからヒントを得たのではないか?

 

お城に限らず、石垣を見かければついついシャッターを押してしまう。改修のなった東京都現代美術館の外構は石垣に取り囲まれている。

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周囲の雑然とした街並みから隔離する石垣。石垣で造られたまちマチュピチュのインティワタナの丘に登る道の擁壁によく似た石組みを見かけた。テレビ番組で見ただけで、強い訪問願望が有りながら未だ実現していない。

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石を切り出した際に出来た傷?も一服の景色としている。

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東京には珍しく整然とした街並みで整備が進む日本橋。その中のビルの地階ロビーにも、石垣が違和感無く取り込まれている。

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そして、最近オープンしたMUJI HOTELのレセプション。箱はオフィスビルを店舗+ホテルにリノベーションしたものだが、内装の石垣には100年前に使用していた都電の敷石を内装材に活用している。花丸印!

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創業者の井深大は、「人材石垣論」を唱えている。

いしがきのいしは、ブロックのようにすべて四角い石だとすぐに壊れてしまう。ごろごろの石や丸い石、四角い石もあって、でこぼこの組み合わせこそが強い。だから、「こいつは生意気な奴だ」と思っても、我慢して使うことが必要だ。すると組織は強くなる。

         「奪われざるもの」清武英利/講談社+α文庫