Boulangerieの宿 Boulangerie Brousse

巡礼29日目の宿は人口1,800人弱の小高い丘の上の村Arthez de-Bearnである。ガイドブックの宿のリストで"Boulangerie"のワードを見かけ、もしやパン屋の宿ではと即インターネットで予約した。8ベッドと極めて小規模 で、相部屋ではあるが宿泊13€/朝食5€/夕食13€とリーズナブルな価格である。

小雨の中を小高い丘を登ると一本道に民家が並ぶ集落に辿り着く。観光案内所も人影も見当たらず思案に暮れていると、後からやって来たフランス人巡礼者が宿を見つけてくれた。

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パン屋の店が無いので分からないはずである。中に入ると机の上に紙のパッケージを並べて男女二人が話し込んでいる。どちらかが宿の人と思ったが私には一瞥もくれない。暫く思案していると机の上を片ずけて黙って出て行った。そこへ宿泊者の一人が階段を降りてきたので声をかけるとドアを指差す。そこには小さな張り紙があり近寄ってみると、何人かの名前が列記されており私の名前も記されてあった。予約は受け付けているので勝手にベッドルームに行けと言うことらしい。階段を上がり空いたベッドの脇に荷物を置く。シャワー、洗濯を済ませ夕食までの時間集落の中をぶらつく。

7時の夕食が近付くと宿泊者が食卓の周りに集まってくる。そこへ主人らしき人がやって来て宿代を徴収し、持ち込んだ料理を並べる。やっと宿の人と対面でき人心地ついた感じである。他の場所でパン屋をやっており、一人では宿の方に十分な手が回り兼ね宿泊者の方どうぞご自由に状態らしい。

料理はオーブンから取り出したままで持ち込んだようで、宿泊者がお互いに取り分けながら勝手に食べ始める。それを主人は何も言わずドヤ顔で背後から見下ろす。

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ローカルフードの味も量も満足の行くものであったが、当然ながらバゲットは流石であった。そして、デザートのエクレアとアップルパイは甘党の私には何よりのものであった。

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食後は皆で後片付けをする。そして、主人は多くを語らず店へと帰って行った。

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翌朝は途中にあるオーナーのパン屋に立ち寄りPetit dejeuner。奥さんらしき人と二人で営んでいる。夕食の料理はここで仕込んで宿に持ち込んだらしい。

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午前中の歩きのエネルギー補給にとテーブルに置かれたフレンチトーストを貪る。

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店の奥には焼きたてのバゲットが立て掛けられており、昼食用に一本ゲットする。

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美味しそうなケーキが目に入ったがここはパスせざるを得ない。

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民家の間を次の宿を目指して歩を進める。

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到着時の案内や説明も無く、夕食時に出会っても寡黙に眺めている主人には、私のような不案内な来訪者には少なからずの戸惑いを覚える。しかし、特段の支障も無く何とも言えぬ心地よさを感じさせられた宿であった。あの優しい眼差しが今だに思い浮かんでくる。

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