続 変わらない美・変わりゆく美

東京国立博物館平成館の企画展は質の高い展示で多くの人を集めているが、「日本の考古」 と題した常設展はあまり知られていない。今回はそちらに足を向けた。最近縄文土器が美の対象として関心を集めているが、考古と言えばどうしても歴史の対象となる。然し、展示物は重要文化財のオンパレードで中には国宝も見かけられる。難しく考えずに眺めているだけで結構楽しめる。

まだ時間があるので、以前訪れたことのある法隆寺宝物館に向かう。ちょっと外れた所にあるので立ち寄る人は少ない。前面に水盤を配した宝物館が現れる。平成11年に建築家谷口吉生氏の設計で建設され、建築学会賞を受賞した立派な鑑賞の対象物である。大きなガラス面に映り込む前面の風景は一服の絵画を思わせる。片隅には大正天皇の皇太子時のご成婚を記念して建てられた日本で初めての本格的美術館と言われる表慶館の緑青の浮き出た緑色の屋根も収まっている。

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そして水面にも

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 館内では皇室に献納され戦後国に移管された7C中心の法隆寺の宝物を、保存しながら広く一般に公開している。8C中心の正倉院の宝物と双璧を成すものと言われている。

一階の展示室にはガラスのケースに収まった48体の小金銅仏が居並んでいる。ここでも重要文化財のオンパレードである。

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中宮寺広隆寺にも安置されている菩薩半跏像も見られる。小粒でありガラス越しではあるが、絶妙な照明の下で間近に眺める仏像に暫く見入ってしまう。

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そして、教科書で見たであろう摩耶夫人。袂から誕生したばかりの釈迦が顔を覗かせている。

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時間が迫ったので奏楽堂へと向かう。ところが門は閉じられたままで、その前には数人の人が何やら不安そうに佇んでいる。パンフレットで会場を改めて確認する。なんと、そこは嘗ての東京音楽大学の移築された旧奏楽堂で、イベント会場はその旧奏楽堂が嘗て建っていた場所に建てられた東京藝の"新"奏楽堂であった。旧奏楽堂の内部に入れるのを楽しみにしていたが残念。

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青柳晋さんのショパンの楽曲のピアノ演奏に始まり、様々な演出を絡めたシンポジュウムが続く。中でも圧巻は林英哲一座の和太鼓演奏と池坊次期家元とその弟子による生け花のコラボは圧巻であった。十分に満足の行くイベントであったが、こうした豪華なパフォーマンスを市民にfreeで提供してくれた藝大の太っ腹には感服した。

という事で、古今東西の美を渡り歩いた1日は私にとっての「変わらない美・変わりゆく美」に触れ合えた充実した1日であった。