予期せぬ出来事-1

帰国から二週間経ち再び日本の泥濘の道を歩き始めた。今回の巡礼行ではこれまでに比し多くの予期せぬ出来事に出会った。旅にはハプニングは付き物だが自前の一人旅では全て自己責任で解決しなければならない。

家を出る数時間前にHISから電話。「気を付けて行ってらっしゃい」かと思いきや、「AIR FRANCEのストライキで予約便(仁川〜CDG)が運航中止」。しかも「代替便は満席なので翌日の同時刻便になる。自宅で待機するか、ソウルのホテルで待機するか」と聞く。予約は大韓航空のはず。「AIR FRANCE?」。「共同運行でAIR FRANCEの運航便」との事。それは兎も角、巡礼開始までの 四日間の鉄道や宿のスケジュール調整が必要。ご存知のように鉄道の時刻表は曜日、場合によっては日にちによって異なるので絶えずチェックが必要。宿は直前のキャンセルでキャンセル料が発生。取り敢えず出発地途中で立ち寄る予定のVezelay行きを諦めスケジュール調整。

ストライキの余波は現地に入って本番。神戸女学院大学文学部名誉教授でフランス現代思想が専門の内田樹氏曰く。

「フランス人は異論が大好きである。デモとストライキは日常茶飯事。」

出発の一ヶ月前にHISからメール。フランスの国鉄SNCFが四月から六月までの三ヶ月間ストライキを予定。週に2〜3日指定して実施するが、対象となる便は前日の17時迄分からない。

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スケジュール上バッティングするのは鉄道利用8日のうち3日。あくせくしても始まらないと現地対応で腹をくくる。

5月8日はスト実施日。出発地のLe Puy en Valayに向かうべくLyon Part-Dieuへ。利用できる便が二本あるのでつい油断した。駅でモニターを見ると二本ともキャンセル。近くにいた職員に確認するとAccueil(案内所)へ。これからが大変。出発が1日ずれると後々のスケジュールの調整が必要。宿の立地と予約の関係から簡単に解決できない。1時間以上のやり取りの末、取り敢えず途中の乗り継ぎ駅のSt Etienne迄行き、翌日(スト実施日)の最も早い便でLe Puyに入りそのまま歩きだすと言うぶっつけ本番で腹を括る。

ところがSt Etienneに着くと、Lyonでは時刻表に無かったバス代替便があるとの事。聖ヤコブ(サンチャゴ巡礼行の守護神)は私を見捨てなかった。遅くなったが無事予定通り巡礼開始の前日に出発地で眠りについた。

巡礼終了後 の5日間シャルトル等の三大聖堂や一度諦めたVezelayを訪問。その代わりモネの大聖堂 のRouen行きは諦めた。結果、ストの余波は最小限にとどめることができた。しかし、過ちを二度繰り返さないためスト実施日のチケット購入の為、前日の17時に駅に駆けつけた。これが並大抵のことでは無かった。フランスでは座席指定でなくても便指定をしたチケットが求められる。その為パリの様な大きな駅ではウエイティングの人が半端ない。そして客が対応する職員と長々と話し込む。更に職員同士が話し込む。私には何を話しているか皆目分からないが、どうも大したことは話していない様である。そして勤務時間が過ぎたのか、多くの客を後にそそくさと席を立つ。しかしこの状況でも何も無いかの様に会話に勤しむフランス人。理解不能。結局二日間2時間以上の人間観察の時を過ごした。