roho/赤

陽気につられ最近外出の機会が増え、異なった形で美術品に出会う機会を持った。

一つは、東京都美術館の「バベルの塔」展。ブリューゲルの"バベルの塔"を目玉作品とした展示会であったが、意外にも大きさは約60×75cmと小さい作品であった。しかしその中に緻密に描きこまれた建設中の様子や建設中にもかかわらず居住者の様子に改めて気づかされ、この作品を観る目が変わった。藝大との共同で制作された拡大レプリカや動画等多様なテクニックでハッキリと見て取れる。因みに絵の中には1,400人の人物が描かれているが、身長170cmとすると建物は高さ510mと推測されるとのことである。

二つ目は、練馬区立美術館の「19世紀パリ時間旅行」。フランス文学鹿島茂氏のコレクションを中心にオスマン男爵による「パリ大改造」前後のパリを絵画、版画、地図、図書等で紹介している。当日は鹿島氏によるギャラリートークがあり、作品の説明は当然として貴重なコレクションの収集にまつわる苦労話が興味深かった。観光旅行から離れて別の視点でパリの街を味わうべく、久しぶりにパリを訪れたくなった。

三番目は、スペイン大使館で催された美術史家池田健二氏のセミナー「サンチャゴ巡礼ー二つの道のロマネスク」。私も経験した「フランス人の道」「北の道」に点在するロマネスク様式の数々の教会の味わい方を紹介され、再会の懐かしさと共に知識不足の為見過ごしたものを知るにつけ、改めて歩きたくなる強い誘惑に駆られた。大使館地階のホールに向かう廊下には、シンプルであるがスペインをイメージさせる数枚の銅版画が展示されていた。赤い壁に掲げられた赤い正方形に丸を描いた一作品は、 あの熱い空気を思い出させた。

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