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紅葉を愛でる

晩秋、草木が冬枯れを前にして一瞬、紅や黄に燃え上がる。華やかにして寂しさを含むもの。これが紅葉という季語の本意である。     「一億人の季語入門」長谷川櫂

 

外国人は紅葉をどう見ているか

「花を見る」という感覚は理解できても、「秋の紅葉を楽しむ」という感覚は、なかなか理解できないようです。彼らには「花は見るもの、葉は見るものではない」という確固たる分類があるのです。

中略

比較的日本滞在の長い外国人は、「黄緑、黄色、赤」とさまざまな色に変わる秋の葉の風景を綺麗だと思い始める外国人と、どんなに日本にいても葉を愛でることを全く理解できない外国人とに別れます。

   中略    

彼らにすれば、葉はただの植物に「分類」されているのです。「花」とは違うカテゴリーなのです。

「花」に分類されたものは見るもの、「葉」に分類されたものは見ないもの、ということです。日本人のように「葉でも色が変わって綺麗だと思う」という「自分と葉」の関係、つまりは変わっていく山全体の環境を包括的には考えないのです。      「クール・ジャパン!?外国人が見たニッポン」 鴻上尚史

  

青葉の五月に訪れた横浜三渓園に再度足を向けた。キッカケは紅葉の季節に合わせて「聴秋閣」を公開すると知ったからである。聴秋閣は最も印象に残った建造物であったからである。

三渓園は製糸・生糸貿易で財を成した横浜の実業家・原三渓が明治から大正にかけて五万坪強の敷地に京都や鎌倉等から17棟の建造物を移築し造りあげた庭園である。一私人が手に入れられるからには、当時では所謂一級品ではなかったと思われるが、今ではその大半が重文に指定されており、三溪の鑑識眼が伺われる。移築の為土地や歴史と切り離されているが、それぞれの建物ごとに独特の景色を作っており、観光地では味わえない魅力がある。では、案内しましょう。

 

横浜駅東口から市バスに乗り、久し振りの横浜の街並みを楽しみながら約40分で到着。正門を入ると正面の大池越しに紅葉した高台にランドマークの「旧燈明寺三重塔」(重文)が目に入る。

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室町時代建造の京都・木津川市にあったもので寺自身は既に廃寺。移築により関東地方最古の木造の塔として生きながらえている。

 

池に沿って進むと、住まいとして建て多くの文化人や政財界人が出入りした「鶴翔閣」に出会う。

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明治後期建造であるが重厚な茅葺屋根や白壁、そして建物前面の生き生きとした松のコントラストが清々しい。

 

池を前にして雁行型に展開する「臨春閣」(重文)。

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その姿は洗練さでは及ばないが、桂離宮を思わせるものがある。五月には内部公開されており襖絵や欄間の彫刻を心ゆくまで鑑賞出来た。江戸時代初期に初代紀州藩主が紀ノ川沿いに建てた数寄屋風書院造りの別荘建築である。

 

次は 待望の「聴秋閣」(重文)。

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青葉も良かったが、名前の通りやはり紅葉である。家光が二条城内に建て、後に春日局に賜ったと伝わる。そして、小堀遠州のライバル的存在であった佐久間将監の作と伝わる。この言われを聞くと益々スターマークが増える。今回は内部には入れないが、間近まで寄って内部を眺めることができた。

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書院造りで茶室などに使われていた。奥の低い小窓越しに垣間見える紅葉が目に焼きつく。これだけで来た甲斐があった。

 

隣の「春草盧」(重文)の左端の三畳台目の小間は織田有楽斎の作と伝わる茶室との事。

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茶室内には九つの窓があり"九窓亭"と呼ばれ華やかな茶室らしい。しかし遠目からは一見地味な作りに見え、来訪者の関心が低いようであったが私にはその控えめな佇まいに惹かれた。

 

「蓮華院」 は大正時代の三溪自身の構想による茶室である。

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表からは竹林越しに垣間見え、五月には筍が顔を出していた。裏に回ると寒椿がひっそりと花をつけていた。彩りの少ない時期だけに心温まる。

 

今回のもう一つの 開放は「横笛庵」で、明治後期の草庵風の素朴な茶亭である。高山樗牛の"滝口入道"で知られる横笛の像が建物内に安置されていた事から横笛庵と称されている。外観は別として、内部土間の縦長の開口部に切り取られた紅葉の眺めに暫く見入った。

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他にも見るべきものがあったがここまで。帰路、睡蓮池・蓮池の枯れた蓮の一群を見ていると、次は睡蓮の時期かと期待を持たせる。

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閉園時間が迫ると池の水面に空の紅が映り込む。

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正門近くの木の下で名も知らぬ猫が正座して見送りをしてくれた。

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帰りのバスから見る建物は、最近では見られない彫りの深いファサードが照明で際立ったメリハリを持って浮かび上がる。

 

ところで、先日国士舘大学イラクの遺跡発掘の話を聞いた後、駅への道すがら弱々しい夕陽にキラキラと輝く紅葉に出会った。スマホでの撮影のためか、そのキラキラ感がとらえられなかった。

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