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木の国

熊野古道紀伊半島の南部の多雨地帯に存在する。その恵みを受け木がよく育ち、「木の国」と呼ばれていたものが「紀の国」「紀伊国」と呼ばれる様になったと言われている。古道は集落や自動車道で分断されたところ以外は頭上を緑で覆われた樹林の中にあり、地形の関係で峠越えを繰り返しながら進むことになる。通常峠歩きといえば頭上に青空を仰ぎながら歩き、峠に到着すれば一気に展望が開けると言った風景を考えるが、熊野古道では樹木に覆われた薄暗い山道を歩き、峠に達してもその風景は変わらず、標識がなければそこが峠と気づかない。

この地域は林業が主要産業で山林はほぼ50年毎の伐採と植林が繰り返されてきた。その為今では成長が早く商品価値のある杉か檜の単一樹種の人工林となっている。樹木は真っ直ぐに天に向かって伸び整然とした美しさを感じる。しかしそれ以上のものは感じられない。植林そして林業衰退による手入れ不足からか、一旦大雨が降れば崩落が発生しその傷跡が残り、古道も分断される。

一方 、寺社境内等には篤い信仰心で守られて数百年生き永らえてきた大樹に巡り合うことができる。植林の樹木の様な美しさは感じられないが、その力強さに命そのものが感じ取られその足元にたたずめば心身共にリフレッシュされる。

皆さんにもその一端を感じてもらいたい。

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上野の大杉(三重県御浜町尾呂志) 

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ナギの大木(新宮速玉大社)

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浜の宮王子社の大楠(那智勝浦町補陀洛山寺)

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夫婦杉(那智山大門坂)

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那智の楠(那智大社)

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野中の一方杉(中辺路継桜王子) 

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一の橋の樟樹(和歌山城)

 田辺で出会った「南方熊楠」については、名前は聞いたことはあるが何者かについてはよくは知らなかった。そこで図書館で「南方熊楠の謎」(松居竜五編/藤原書店)を借り出し目を通した。偉大なる学者であったが生涯在野にあった為一般にはあまり知られていない。彼の数多くの功績の中で印象に残ったことは、明治末に「神社合祀令」に強く反対しその廃止を勝ち取ったことであろう。今回出会えた大樹もその恩恵によるものであろうか。