初冬の街をぶらり




12月11日
昨夜からの雨が昼前にはあがり突然青空が広がった。先日東京新聞で開催中の二つの美術展の紹介記事を眼にしたのを思い出した。開催が12月末までなので近いうちに出かけようと思っていた。昼食を済ませ、地下鉄で新宿まで出てバスに乗り込む。仕事を離れてからは時間は有り余るほどあり、時間のかかる路線バスをあえて利用することがある。街並みを眺めるのにバスのスピード感が丁度良いし、日常感を持った利用者を見ているのも楽しい。
最寄りのバス停で降りると丹下健三設計の東京カテドラルの鐘塔が眼に入る。なんとこの教会こそサンティアゴ巡礼のパスポートであるcredencial(巡礼手帳)の日本での発行所。これがないと現地の公的なアルベルゲに泊まれない。目指す美術館は目白台にある旧細川藩邸にあり、「春画展」を開催中の永青文庫。テーマがテーマだけに私自身ある意味複雑な心境で歩を進める。
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木立に囲まれた美術館の館内に入るとそこでは多くの老若男女で溢れかえっていた。皆さんそれぞれ様々な思いを持ちながら出かけてきているのであろうが、あっけらかんと展示物を見ている。私も最初はある蟠りを持って鑑賞していたが、浮世絵、特に肉筆画の美に魅入ってしまった。女性の柔肌を表現した身体の線、艶やかな着物の色彩。圧巻は身体全体の表情とほんのりと朱にそまった肌。そしてチケットに使われていたものが大袈裟になるが究極のエロティシズムを表現していると感じた。
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なお肉筆画を始め、k主だった作品が海外所蔵であったのが残念という思いと、だからここまで守られ日本の美を海外に知らしめているという思いが複雑に交錯する。
建物周囲の緑は自然の形が残されており野趣を感じさせる。複雑な形の巨大なしいのきは見もの。
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外に出ると右側に胸突坂の急な階段があり、その足元には黄色に色付いたイチョウが覆い被さる水神社。
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さらにバスで今世間を賑わしている九段へ向い、北の丸公園を抜けて東京国立近代美術館へ。途中の日本武道館に人だかり。近藤真彦35周年記念ライブとある。若い女の子が多いのには驚く。
目的は「藤田嗣治、全所蔵作品展示」。独特の白い肌の裸婦像や必ず顔をのぞかせる猫をゆっくりと鑑賞できた。太平洋戦争の戦場を描いた巨大な絵画が多くの展示されており、自分なりにその背後にある彼の複雑な心境に思いを馳せた。
常設展では多くの所蔵品の見方を理解してもらうべく近代日本の代表的な作品が展示されており、モネだのゴッホだの海外の作家の作品に群れるのも良いけれど、時にはこうした場所を訪れゆったりと過ごすのも良いものだと言いたい。
東山魁夷の「道」は非常にシンプルな絵であるが、お遍路やサンティアゴ巡礼を経験した私にとっては様々な事や思いを想起させる。
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スペインの道
最後の展示として外国の作家のビデオ展示があり、浮世絵の延長上にある作品を思わせた。
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その背後のバルコニーに出てみると、前方には最近再開発が著しい大手町の超高層の夜景が光の壁となっていた。
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